テーマ:最近観た映画。(40110)
カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
この映画 「ぼくの大切なともだち Mon meilleur ami」 を、フランスではのべ450万人が見たというのだから、国民性の違いを改めて感じた。
≪人を信じすぎて傷ついてきた男と、人を信じず傷つけてきた男。 2人に芽生えた小さな奇跡の物語。≫ と、宣伝ビラにある。 この ≪人を信じず傷つけてきた≫ 主人公の美術商フランソワ(ダニエル・オートゥイユさん)は、傲慢ゆえにほんとうの友だちがいないという設定だ。 しかし映画のなかの彼は、一生懸命の不器用な気配りが不発におわったり裏目に出たりというほどのことであって、言うなれば金持ちになった車寅次郎みたいなものだ。 気取った微笑をたたえつつ 「お前の葬式には誰も行かない」 と平然と言い放つ仲間たち(これがフランスでは「ふつうの人々」らしいが)のほうが、百倍もイヤ味な存在だ。 この「ふつうの人々」のずけずけとした残酷さが随処に出てくるのがこの映画。 フランスのふつうの人々というのは、なんと難しい人たちか。 「傲慢で気配りが粗忽で友だちがいない」という設定の主人公フランソワがじたばたする姿のほうが、その他おおぜいの「ふつうの人々」よりもよほど愛すべき共感の対象になる。 ヘマというヘマが、車寅次郎ふうなのだ。 自分にはフランス人の友だちはできないだろうと確信して映画館を出た。 村の楽隊が奏でるような素朴な音楽は絶品だった。 (8月8日まで、渋谷の Bunkamura ル・シネマで上映中) * * * で、ぼくにとって 「だいじな友だち」 とは? 胸に手をあてて自問すると、ぼくが求めるのはあくまで共同作業の仲間であって、それ以上の、「人生を語りあう」みたいな関係は、ベタつき感がいやで本能的に忌避してしまう。 ほれた女は、べつだ。 いしょうけんめい話をして、すべてを求めてしまう。 ベタついてもいいからだろうか。 すべてを求めても、与えられるものは少ない。 「ザ ダンス オブ ザ ヴァンパイアズ」 か 「ザ ファントム オブ ザ オペラ」 めいているか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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