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カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
製作者に名を連ねるフジテレビが朝のワイドショーで、試写会で何度笑いを取ったかを数え上げ
「とにかく笑える映画」 とPRしていた 「ザ・マジックアワー」。 不思議の国のようなセット。劇中映画のかずかず。 演劇気分が溢れ、映画を作ることへの愛が炸裂しているところは、まぎれもなく三谷幸喜作品だけど、ぼくには、伊丹十三映画の生れ変りのように思えた。 ひとの心が理屈をすっ飛びぬけて迷走し、誤解と偶然が生み出す 「あれれれ」な展開のディテールをとことん楽しむための映画。 スタントマン稼業の村田大樹 (佐藤浩市 こういち さん) が、恋多き暴力団員の備後びんご (妻夫木聡 つまぶき・さとし さん) に映画の撮影だと騙されて、名うての殺し屋を堂々演じはじめる。 その殺し屋を無き者にしようとたくらむ暴力団ボスの懐に飄々ととびこんで。 暴力団ボス (西田敏行さん) は、ゴム製の拳銃で本物のギャングと渡り合って平然としている村田の度胸に仰天する。 勘違いが勘違いを生むからとてもおかしいのだけど、それは 「笑い」 というよりむしろ、凝りに凝って作ったルートを転がり落ちてゆくビー玉を目で追ってゆく楽しさといったらいいだろうか。 ふつうこういう映画は伏線探しの楽しみを求めてもういちど見たくなるのだけど、「ザ・マジックアワー」 は材料を骨の髄まで嘗め尽くすように料理していて、十二分に満腹して映画館を出た。 水戸黄門の渥美格之進 (格さん) 役で活躍していた伊吹吾郎さんが、訳知りで思い切りのいいバーテン役をやっている。 プログラムを読んでいたらその伊吹さんが、主演の佐藤浩市さんのことでこんなことを言っていた。 ≪三谷監督の脚本である 「新選組!」 の撮影現場での事、佐藤さん扮する芹沢鴨が年老いた浪人を罵倒するシーンがあったのですが、その場面が終わるやいなや佐藤さんがその役者さんに近より、深々と頭をさげ、 「役柄とはいえ、失礼な事を言い、大変申しわけありませんでした」 と わびておられた時、また胸の奥が温かくなりました。≫ ほめられている佐藤浩市さんにも、ほめた伊吹吾郎さんにも、ほれちゃうなぁ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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