カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
今や大企業となった 「劇団四季」 が昭和29年1月22日に旗揚げしたときの演目だ。
現代にあわせて多少は演出が大胆になっているのかもしれないが、新鮮な劇だった。 2度、3度観てもおもしろいはず。 四季会員特典なのかもしれないが 「アルデール又は聖女 劇團四季 1月31日(土)昼1時 於 自由劇場」 と、黄土色のカードに一時代前の活字で印刷した復刻版ふうの 「會員券」も窓口で渡してくれた。 55年前の旗揚げ公演演目への愛を感じてしまった。 「復刻版」 のチケットなのに、観劇当日の日付と場所が刷ってあって二重の記念になるところがミソである。 (昭和29年の公演場所は、芝の中労委会館だった。) * 登場する男が皆、何かしら浮気をし、ないしは浮気を迫っている。 将軍レオン・サンペは、今朝もさっそくメイドのアダ嬢を後ろから抱きすくめている。 その将軍に嫉妬して15分ごとに 「レオン、レオン!」 と呼びかける妻アメリー。 そして将軍じしんもまた、アダ嬢が調理場で話しこんだ若い配管工にじりじりと嫉妬する……。 来訪する伯爵夫妻。 何と伯爵夫人リリアーヌの浮気相手のヴィラルディユー男爵が運転する車に乗ってね。 ここまで公然たる浮気を 「浮気」 と呼べるのか……。 という具合でじつにおいしい舞台設定だが、この不思議な人間関係が社会通念を分解してしまうのである。 そのおかげで、人が人に惹かれ、人を愛し、引きとめようとする情感のことを一から考えさせられる。 みごとな脚本。 明治10年にフランスはボルドーに生まれ、昭和62年に77歳で没した劇作家ジャン・アヌイの38歳の作。 アヌイという作家の戯曲をいろいろ読んでみたくなった。 主人公であるはずの、レオン・サンペ将軍の妹、アルデール (Arde`le) は、舞台中央の扉の向こうに閉じこもり、最後まで現れない。 そのアルデールの、命をかけた恋について、その他おおぜいの浮気者たちが物言いをつけ、何とか扉を開けようとする右往左往が劇の基調だ。 最後に、扉は開かれる。 そして、いくつかの愛が散る。 いいお芝居だった。 観劇から2日経っても、こうして評を書きながら感興が立ち上がってくる。 (公演は2月4日まで、浜松町の自由劇場で。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Feb 2, 2009 08:12:46 AM
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