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カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
今月、『日本経済新聞』 の 「私の履歴書」 は女優の香川京子さんだ。
ちょうど先日NHK・BSで観た黒澤 明 監督の 「悪い奴ほどよく眠る」 (昭和35年) でも、「悪い奴」 の大番頭 (といっても高級官僚ですが) の娘役。 ギリギリきしる悪意の河に純情が翻弄されるのを演じていた。 香川さんの几帳面さがスクリーンからうかがわれた。 香川さんが書いた 「私の履歴書」 の題字も端正な文字だ。 3月10日の 「履歴書」 に、今井 正 監督の 「ひめゆりの塔」 撮影のときのことを香川さんが書いておられる。 これが想像するだにすさまじい撮影。 つくづく、仕事で弱音を吐いちゃバチが当たると思った。 夏の沖縄戦が舞台だが、クランクインが昭和27年の秋。 翌28年の1月2日に撮影を終えて、1月9日に封切りだったという。 するとどうなるかというと、 ≪夏の沖縄戦を冬の東京で撮るわけで、寒さとの闘いだった。 吹きさらしのオープンセットには5センチほどの霜柱が立っていた。≫ 東京は、今より寒かったようだ。 ≪設定が夜の移動だから夜間の撮影が多く、爆弾が破裂したり、雨が降りしきったりする中、凍ってガチガチの地面に伏した。 しかも半そで姿。 そのころ出始めたビニールで母が下着を作ってくれ、衣装の下に着た。 分厚くごわごわしていたけれども、風も水も通さず助かった。≫ さらっと書いておられるが、これはすさまじい。 次も、すごい。 ≪女子学生が行軍の合間、川に入って水浴びし、束(つか)の間の解放感を味わうシーンを千葉県佐原の水郷地帯で撮った。 画面では皆、楽しげな笑顔だが、撮影が終わるや、お借りした農家のお風呂に急いで飛び込んだ。≫ この撮影を、今の俳優さんたちがやらせてくれるか。 次の話にも、プロを感じた。 ≪吐く息が白くならないよう、本番前に氷を口に含んだりした。≫ 暖房設備が貧弱ななか寒中撮影がつづき、風邪をひく人が続出したという。 映画は公開と同時に大ヒット。累積赤字で経営難だった東映を立て直した。 ここまで知ったら、「ひめゆりの塔」、何としても観てみたくなった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Mar 12, 2009 08:01:37 AM
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