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May 10, 2009
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何の役をやってもまぎれもなく鹿賀さんなのは、役のほうが鹿賀さんの姿をして舞台に現れるからだ。

鹿賀さんの 「ジキル&ハイド」 で銃声をしかと胸郭に受け止めた日生劇場で、こんどは鹿賀シラノの心意気が夕焼けに燃え立つのを見た。

こんどで 「シラノ・ド・ベルジュラック」 観劇は、3度目になる。

さいしょが 平成18年11月、シアター1010での「文学座」公演
江守 徹さんのシラノ、高橋礼恵(のりえ)さんのロクサアヌだった。

辰野 隆・鈴木信太郎訳の名調子を堪能できる、多人数出演のオーソドックスな舞台。
いま思えばまずこの基本形を、江守さんの渋くも華のある演技で見られたのは幸運だった。

つぎが 平成19年9月、青山円形劇場の公演
市川右近さんのシラノ、安寿ミラさんのロクサアヌだった。

扮装も立居振舞もいわゆるジャポネスクではないが、わずか7人の俳優さんでシンプルに徹した円形舞台で演じた舞台は、にぎやかな 「能楽」 だった。

江守 徹さんの舞台を見た後しばらくは、「ガスコンの青年隊!」 の名調子が耳に響きつづけた。
よぉし、いつか、フランス語の韻文を朗々と読んでやる……

ええ、決意のほどは変わっていません。
横恋慕が過ぎて、エドモン・ロスタンの原書もまだ買わずですが。



あざやかに、あでやかに、華麗な詩句を繰り出し、
異国のひとと思えぬ、あの見栄っ張りとやせ我慢と自己犠牲の美学。

みずからの最愛の女性へのたましいをこめたラヴレターを、ゆえあって別の人の名で戦場から毎日、いのち賭けて発送しつづける。

シラノの人生そのものが偉大な交響楽だ。
ミュージカルでぜひ観てみたい……
江守 徹さんのシラノを見て以来、それがずっと夢だった。

ようやく実現した。
しかも 「ジキル&ハイド」 で酔わせてくれた Frank Wildhorn さんの旋律で。

ワイルドホーンさんのメロディーは、自己主張をせずストーリーが自然に紡ぎだすままを音符に落としているように思えた。

ミュージカルを観おわったというのに、ストレートプレイを観たあとの気分なのだ。
それくらい、歌がストーリーにじつに自然に織り込まれている。



シラノが義理を立てた美貌の青年クリスチャン・ド・ヌーヴィレットはダブルキャストで、観劇した5月9日夜の部は中河内雅貴(なかがうち・まさたか)さんだった。

出だしは甘美すぎるように思えたが、全体を通すと納得の出来だった。

さぁ、こうなると浦井健治さんのクリスチャンがどんな切れを見せるか楽しみになる。
あと1回、チケットを買ってあるのだけど、今度は浦井さんの回だろうか。



ロクサーヌを演じた女優さんは、年齢という概念が辞書から消える絶対美に恵まれたひとだ。
ほれぼれした。

ただ、わたしはこの女優さんと相性がよくないらしく、ついに体に電流を受けることができなかった。

ときどき音階が10分の1ほど、さ迷って浮き沈みするときがあるように思えた。

目では奴隷を志願したいくらい彼女に心酔しながら、耳はなぜか彼女を拒否している。

じつは、去年の4月に彼女が主演した 「トライアンフ・オブ・ラヴ ~ 愛の勝利 ~」 でも、違和感を覚えたのだ。

そのときのブログを読むと、
≪主演の女優はときに音程がはずれ、声質がじゃじゃ馬のように落ちることがあった。帝劇ならアンサンブルにも加われまい。≫
などと酷評している。

今回はそこまでのことはなかったけれど、「天は二物を与えず」 という言辞が脳裏にふと浮かんだのは否定できない。

だが、夕陽に舞う秋の落ち葉と、シラノの心意気と、シラノの真善美を見透して深い愛を注ぐロクサーヌの最終景は、凄絶なまでに美しく、彼女はわたしの心の女神のひとりとなった。

(5月28日まで日比谷・日生劇場。
6月3~7日、大阪・梅田劇場。
6月10日、広島厚生年金会館。)





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最終更新日  May 30, 2009 09:54:20 AM
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