テーマ:中国&台湾(3304)
カテゴリ:中 国 界
サントリーは平成11年以来、中国・上海でビール売上げのトップ企業だ。
おおかた 現地の大手ビール会社を買収したのだろうと想像していたが、調べたらそうではなかった。 上海の大衆に受ける味のビールを開発し、地道に自力で大衆市場を開拓し、汗をかきながらトップの地位を築き、守ってきた。 その辺のレポートをネット上でいくつか見つけた。 ひとつが、滋賀銀行証券国際部上海研修生の荻野智史さんの 「上海ビール市場 ~中国最大の消費地上海での勝利を目指して」 というルポ。 サントリー本来のビールが思いのほか売れなかったことから調査を進め、アルコール度が低くてすっきりした味のビールが受けることを知り、それに合わせた 「三得利ビール 白」 を開発して平成9年に本格投入。 (2年後の平成11年に上海のビール市場でトップになった!) いまひとつは、留学生らしき馬維娜さんがサントリーの経営企画部・杉信大悟さんに聞き取り調査した 「サントリー株式会社の中国事業の概要」 というレポート。 大衆価格で売りながらも利益をあげるべく、大手の卸売りに一括で卸すのではなく、二次卸の小規模卸業者110社と直接取引を行い、流通段階を1~2段階省くという作戦に出た。 (商社マンとしては痛し痒しの話……。) 3つめが日経BPの記事 「サントリー、上海でビール首位の秘訣」。 平成11年10月20日付で古いのだが、小売店をとにかく足で回って地道な営業努力をする様子が書いてある。 日本人の上海首席代表は1年間に小売店を3千軒も訪問。 中国人の営業マンを130人も雇い、自転車で小売店を回らせて販促と情報集め。 * そのサントリーの首位の座を脅かそうとする強力な中国メーカーが、上海近郊に大規模なビール工場を建設中。 さぁ、サントリーよ、どうする。キリンと手を結んで勝負だな。 ……8月23日の日経1面の特集記事が、またお得意の煽動記事を書いていた。 ライバルメーカーの新工場は、上海全体の年間需要のほぼ半量を生産できる規模、とある。 このメーカーの名は、華潤雪花。 おぉぉ、 「華潤」 といえばエネルギー分野で中国共産党の大幹部らとギヴ&テイクしながら大きくなった財閥じゃぁないか。 共産党が上海ビール市場を外国企業から奪還すべく勝負を掛けてくるんだな。 案の定、日経記事には華潤雪花の急成長は税制優遇のせいもあったと書いている。 ≪90年代後半、中国政府が800社超あったビール会社を整理する中、税制で優遇された華潤は、約60のビール会社や工場を買収。 大瓶1本2~3元 (約28~42円) の大衆価格で全国ブランドにのし上がった。 その華潤が、サントリーが40%のシェアを持つ上海を攻める。 新工場は年末にも稼動。 サントリー中国と牛の鎌田泰彦董事長(とうじちょう = 「会長」) は 「来年が勝負」 と身構える。≫ 中国人好みのビールの味が特許で差別化できるわけもない。 中国共産党の大幹部が面子をかけて華潤雪花を優遇税制・優遇融資で支援したら、消耗戦になって外国企業のサントリーは勝ち目はないだろう。 上海の大衆市場死守の泥沼の戦いに、キリンまで巻き込んでほしくないものだ。 サントリーの腕利きの中国人営業マンも高給で引っこ抜かれるだろう。 総力戦だ。 (そういうとき日本企業というのは、対抗して現地社員の給与を急騰させるといった荒業ができない。) 華潤雪花は中国企業だから、日本企業では支払えないコンプライアンス違反のカネが自由に使える。 中国共産党の幹部と結託して、税務当局や地場銀行、卸業者などの全面的支援を得てサントリーを蹴散らしにかかるだろう。 華潤雪花の上海進出を、中国共産党の誰が支援し、どんな見返りを得ようとしているのか調べ、市場首位の座のあきらめ時を早めに決断することをサントリーの経営トップにはおすすめしたい。 トップがそれをやらず、ひたすら社員の奮励努力を期待したりしようものなら、担当者は不幸である。 それを思って、他人ごとながら長文を書いてしまった。 あの自国中心主義の中国で、中国企業が製造することに何の困難もないビールの圧倒的シェアを、よりによって看板都市の上海で、外国企業が勝ち得ていたこと自体が異常な僥倖だったのだから、シェアを下げることで普通に戻るだけである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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