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カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
1936年のパリの場末の劇場。2階席も入れて、収容人数は300~400人ほどか。
オーケストラとともに演芸を楽しむ、せつなくもすてきな場所。 それがシャンソニア劇場。 「幸せはシャンソニア劇場から」 サイトでは、予告篇も見られます。 (←サイトを開けるとすぐ音声が出ます) 冒頭、大晦日の華やかな舞台。 ところが、シャンソニア劇場はこの大晦日に、いきなり、つぶれてしまうのです。 妻に駆け落ちされた男は、けなげな息子への愛がひどく不器用で、 スタッフは劇場を愛惜し、 そんな場末に、きっぱりとした歌姫が迷い込み、 彼女を愛する革命青年と、彼女に釘付けになる街のボス、 20年間もひきこもってラジオばかり聴いている白髪紳士……。 道具立てを数え上げただけで、この映画への恋がぽっとほのおを上げてしまいます。 登場人物それぞれの深みと陰りまで見せてくれながら、 そして、あれこれの悲劇もあるのだけど、軽やかな音楽の慰撫のちからが さわやかな涙を引き出してくれる。 この映画の華、新人歌手のドゥースのうたうオリジナル曲は、宝石のようなシャンソン。 Loin de Paname (「パリから離れてしまったら」) は、流麗。 Un recommencement (「あらたな始まり」) は、さわやか。 Attachez-moi (「わたしをつなぎとめて」) はドラマにあふれ、 Enterree sous le bal (「ダンスホールに埋めて」)は、せつなく、 Partir pour la mer (「海へ行こう」)は、ミュージカルコメディーの楽しさがきらきら輝く。 わたしは、さわやかな Un recommencement が、いちばん好きです。 ドゥースを演ずるノラ・アルネゼデールさんは、オーストリア人の父とエジプト人の母のもとに生まれた20歳。 曲ごとに新たな美しさをまとう。 彼女の声の質は、まさにぼくのタイプ。フランスの笹本玲奈さんですね。 彼女の出る映画は、これからすべて観なくっちゃ。 (ノラ・アルネゼデールさんは、ゲラン化粧品の広告モデルにも抜擢されました) そしてもうひとり、心を奪われたのが、父親おもいのアコーディオン少年のジョジョ・ジェルマンを演じるマクサンス・ペランさん。 ほとんど無言で、べたついたところがないのに、見るものの共感をよびこむ ちからがある。 じつは、ちょっとした仕草がぼくの次女に似ていて、それがいっそう胸に来ました。 観るひとそれぞれが、ちょっと脇においていた愛を思い出し、火をつけられる映画。 この映画のことを知ったのは、あるブログで 「パリの雰囲気がよく描けている」 とほめていたのが初め。 (昭和11年の場末のパリの雰囲気が残っているところが本国にはなくて、プラハで撮影した由ですが。) そのあと、9月11日に日経夕刊の映画評を読み、 数日して映画館のサイトをチェックしたら、どうも9月18日までの上映らしく、16日の夕方にいそいそと銀座・和光の裏手の路地にあるシネスイッチに行ったのですね。 「プロデューサーズ」 のような作品を想像していたら、期待にたがわず、あまりに気にいって翌17日の夜にも観にいった。 そしたら、プロットが全部わかっているのに、いやむしろ、プロットがわかっていたからこそ、それぞれのシーンのしっとりした情緒とメロディーに即座に入り込めて、いくつもちりばめられた再会のシーンに心が涙でくしゃくしゃになったのでした。 心からおすすめの映画です。サウンドトラックのCDも。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Oct 5, 2009 08:27:45 AM
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