テーマ:最近観た映画。(39933)
カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
本筋部分は背景音楽を控え、テンションの高いドキュメンタリーのような仕上がり。
ところどころ音楽劇ふうに、哀歓を淡々と歌ったギターとともにこの特異な家族のホームビデオが流れる。 「私の中のあなた」サイト (開くと、音声つき予告篇が流れます) 重いテーマだが、おおかた ほのぼのドラマに仕立てたのだろうと、ラヴ・コメディのキャメロン・ディアスさん目当てに見たら、とんでもない間違いだった。 「いのち」 という名の臓器があるとすれば、それを手のひらの上に載せて目の前につきつけられたよう。 生きるって、何なんだろう。この世に何を残し、何を失って死ぬのだろう。 「いのち」 をこの指で直(じか)にさわる映画。 * 短命が予想される白血病の姉のいのちを長らえさせるため、完璧に適合する臍帯血(さいたいけつ)や骨髄のドナー (提供者) として計画出産された妹。 妹は幼いころから、姉に自分の一部を提供するために、本来なら不要なはずの入院を繰り返す。 やがて妹11歳のとき、姉は腎臓の機能を失い、しごく当然のことのように母は妹の腎臓のひとつを姉に移植させようとする。 妹は弁護士事務所をたずね、自分のからだをこれ以上提供したくないと、両親を相手どって訴訟を起こす。 テンションを高くしても低くしてもウソっぽくなりそうなこの状況。 この難しい 「妹」 役を13歳のアビゲイル・ブレスリンさんが演じていて、引き込まれる。 妹の行動が引き金でそれぞれの人びとが想定外の壁に衝突し、言い分を披瀝する。 ドキュメンタリーのような仕上がりが納得感を与えている。 * 「かわいいキャメロン」 はここにはなく、自分の信念の世界に凝り固まった弁護士資格所有の母親は、間違って高いIQとともに生まれた究極のバカ女とさえ見える。 夫は静かだ。 インテリママの頑(かたく)なさがやがて和らぎ、家族愛のより深い形にしみじみ思い至る。 家族を一段の高みに導いたのが、じつは非力な姉であった。 そのけなげさ、そしていのちの刹那の美しさが、深い感動を与えてくれる。 ときに情念が肉弾のようにぶつかり合う攻撃性はアメリカそのままだが、アメリカンな諦念の境地がどういう形をとるのかもまた、しみじみと見せられた。 2度見るのはためらわれるが、一生忘れられない映画。 自分のいのちが長くないと知ったとき、わたしはきっとこの映画をもう2度、3度と見ると思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[映画・演劇(とりわけミュージカル)評] カテゴリの最新記事
|
|