文春新書『英語学習の極意』著者サイト

11月後半、オペラ 「カプリッチョ」 公演への応援をブログ冒頭に掲げておりました。
東京二期会から、集客に苦戦中と案内があったのに応えて。

日生劇場で、公演２日目の11月21日の昼の公演を観ました。
見たところ、１階席は４分の３の入りか。

オペラのストーリーがじつはまったく理解できなかったのですが、うつくしい音楽と第２幕のバレエ （なぜバレエが挿入されたかも不明でしたが） に満足して、表情がゆるんでいるのが自分でもわかりました。



これは、日生劇場ロビーに置かれた舞台美術ミニチュア。

この華麗なセットが、オペラの終局に至ると畳み込まれ能楽の舞台のように簡素な仕立てとなり、人びとの憧れの的であったヒロインの伯爵令嬢マドレーヌの老境の姿を迎え入れるのです。

リヒャルト・シュトラウスの曲はあくまで流麗にとぎれなく、歌とバレエがなければ気持ちよく眠りに誘われていたかも。

演出設定は、昭和19年、ドイツによる占領下のパリ。

第２幕の後半で突然ナチスの親衛隊が出てきたが、面食らうというより、ただ舞台の流れに身をまかせるほかなかった。
舞台では第１幕からドイツ語で藝術論議が展開されていた （らしい） のですが、字幕をときどき見るていどではスジを追うのは無理でした。

12月２日の日経夕刊の劇評 （山崎浩太郎さん） によれば、

≪民主的な藝術はどっちつかずで観念的で、インテリにしか伝わりにくい。
大衆はもっと直接的で、わかりやすく安易なものを望む。

このズレがファシズムの専制につながる危険を、執事長と給仕たちの変容がつきつける。
観念論をねじ伏せる肉体的暴力の象徴として、かれらは途中でナチスの親衛隊に変じ、藝術家を迫害するのだ。≫

う～ん、そういうことだったのですか……。

じつは平成19年２月11日に、同じ リヒャルト・シュトラウス作曲の 「ダフネ」 公演 を上野の東京文化会館で観た。

現代舞踏が彩る舞台の景色が華麗に植物化してゆく変容のなか、あくまで清らな音楽が間断なく続く作品だった。

変化と山場のある作品を求めるぼくが、なぜかリヒャルト・シュトラウスの作をつづけて観て、理解できぬまま満足したのは、やはり何かのご縁でしょうか。

==
＜11月後半のブログ冒頭＞

オペラ 「カプリッチョ」。この週末に日生劇場で上演される。

≪オペラ談義をオペラにするという、リヒャルト・シュトラウス最後の遺言ともいうべき高度の藝術論議で、その内容を男女の機微に移し変えるという機知にとんだ内容でございます。≫

二期会から手紙が届いた。集客に苦戦していて、売上が営業予算の半分ていどに留まっているという。



≪まことに異例のお願いではございますが、高い藝術性をもった本作品のような公演が興行的な失敗という事態となりますと、今後の邦人によるリヒャルト・シュトラウスのオペラ上演に少なからず影響をもたらすのではないかと危惧されております。≫

ぼくは、すでに11月21日のチケットを買っていた。二期会への応援の意味で、ブログ冒頭でご紹介します。

公演は、帝国ホテルの向かいの日生劇場で。11月20～23日、毎日１回。
連休の予定が空いておられる方は、ぜひ！　
ドイツ語上演。舞台両サイドに字幕がつきます。

チケット予約の案内は、二期会のサイト をご覧ください。