カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
「ウーマン・イン・ホワイト」 1月24日の東京公演千穐楽は、3度目のカーテンコールで観客総立ちのさわやかな拍手となった。
舞台奥に足場を組んで作られたオーケストラ席から、指揮者の塩田明弘さんと楽員さんたちも降りてきた。 7名の役者さんたちが舞台挨拶。その内容は、後半でお伝えしよう。 * 1月16日公演の感想 と 1月19日公演の感想 で書いた第2幕の注目のシーンに、笹本玲奈さんとカンパニーがすばらしい答えを出してくれた。 フォスコ伯爵 (岡 幸二郎さん) がマリアン (笹本玲奈さん) に妹ローラの死を告げる場面。 マリアンは、語りはじめるフォスコ伯爵の腕もとに始めからすがりつくようにしている。 「いったいどういうことなの?」 「うそ…」 フォスコ伯爵から徐々に遠のくマリアン。あいてゆく距離がマリアンの拒絶の気持ちを示している。 マリアンは、衝撃を懸命に消化しようとしながら息をのむ。 うちひしぐものに抗しきれずに体が折れ伏してゆく。 何度も、嗚咽するかのように大きく息をのみながら、ふりしぼるように 「ローラ……」 泣き崩れるのでもなく、茫然自失するのでもなく、驚きと悲しみを舞台で最大限に表わすのにこういう方法があったか。 きっと、キャストとスタッフの皆さんが考えに考え抜いた結論だったと思う。 千穐楽公演にふさわしい、すばらしい贈り物をいただいた。 これに続く妹ローラ埋葬の日のシーン。 儀式が終わったあと墓前でひとり身を伏すマリアンが、やがて身を起こしてパーシヴァル卿への憤怒を絶唱する 「このままではいない (Marian's Determination)」。 短いナンバーだが、劇場をつきぬけるパワーが確実に伝わり、舞台奥へ駆け去る笹本玲奈さんへ万雷の拍手が送られた。 * 子役、といっても中学3年生の、石丸椎菜さん。 パーシヴァル卿とマリアンの結婚式の不吉を暗示する、半音に満ちたじつに難しい旋律の歌を舞台中央で独唱する清らな声が、みごと。 群舞をリードするほど躍動感のある踊りも、腕が気持ちよく伸びる。 貧民窟で小銭をせびりスリをして生きる少年にもみごとになりきって、歩く姿の がに股がまた、うまい。 プログラムに椎菜さんが書いている。 ≪高校生になったら挑戦してみたいことがたくさんありますが、やっぱりずっとお芝居を続けて行きたい! そう強く決意した15歳の冬でした (笑)。≫ 再演観劇3回目の千穐楽では、椎菜さんが舞台にいるときはずっと彼女を目で追いかけた。完全に、父親目線ですが (笑) 。 きっとすばらしい女優さんに成長なさると思う。これからも、応援したい。 東宝さん、たのみますよ! * 役者さんたちの舞台挨拶のさわりのご報告。 笹本玲奈さん ≪12日間、いのちを削りながら、キャスト・スタッフ一同やってきました。 いのちを削りながらこうしてやってこれたのも、皆さまの拍手とご声援のおかげです。≫ 「いのちを削りながら」 という言葉が、すとんと心に落ちてゆく。 まさにそうだったにちがいないと思える、すばらしい舞台でしたよ! 田代万里生さん ≪ここ数ヶ月、練習を積んできたわけですが、ご覧になっておわかりのとおり大変な修羅場でした。≫ 朴東河(ぼく・とうが)さん (挨拶の前に、岡幸二郎さんが 「短くね!」 と耳元で言う。それがうけている。) ≪ (前略) 全員が立ってますねぇ。すばらしいですねぇ。さあ、それでは皆さん、お隣のかたと手をつないで、ここにいるみんな仲間なんだと、そんな気持ちで、さあ、手をつなぎましょう。≫ (たぶん、韓国ならここで観客が手をつなぎあって応えるのだろうか。東京ではムリでした。) ≪さあ、手をつなぎましょう、みなさん!≫ (ようやく挨拶がおわり後ろに引いたところで拍手をうけると、挨拶のアンコールにお応えし、とばかりに舞台中央に。それがまた、うける。) ≪では次は、妻のローラです!≫ 大和田美帆さん ≪初演では、わたしはその辺で (と観客席の左手、前のほうの席を指す) 2度観させていただいたんですが、今度は舞台のこちら側に立てて感激でした。≫ 和音美桜さん ≪……わたしは、悲しい部分をひとりで背負っているような役でしたが (笑)、でもこの空間にいられたことが幸せでした。≫ 光枝明彦さんと岡幸二郎さんが連れ立って ≪風邪もひかずに最後まで務められたよね。≫ ≪そうだよね、よかったよね。≫ さすが千穐楽公演は気持ちがよかった。 ショップで光枝明彦さんのダンディなCD Dream With Me を買った。 ミュージカル 「モーツァルト!」 のナンバー 「心を鉄に閉じ込めて」 も収められていて、聴きながら涙がにじみ、いつしかぼろぼろになった。 「関白宣言」 も、役者さんならではの歌い。 カンパニーのみなさん、最高の一日をありがとう! (東京公演の後、1月30~31日には大阪のシアター BRAVA! で公演あり。) 【観劇マナー】 上演中、コンビニのビニール袋やノド飴の小袋のシャカシャカ音は、劇場じゅうに響きます。 ビニール袋は手元に置かず足元に。ノド飴は開演前に口に含む。これが大事なマナーです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jan 25, 2010 09:19:46 AM
コメント(0) | コメントを書く
[映画・演劇(とりわけミュージカル)評] カテゴリの最新記事
|
|