カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
ぼくが生れた昭和34年、ボストンのコロニアル劇場が舞台。
劇中劇も巧みに織り込まれたミュージカル。 主演の大根女優が初日の終演直後に死に、殺人課の刑事 (たまたま演劇好き) が劇場を封鎖し捜査をはじめるが、やがて第2、第3の殺人が起きる。 探偵小説仕立て。 ミュージカルはセリフの量が限られるから、推理ものに仕立てるのは難しい。 だが、この作品はよく出来ていて、推理脳もほどよく刺激された。 ブロードウェイ版 (平成19~20年公演) のCDジャケット マルシアさんと鈴木綜馬さんが出るミュージカルだから、これは見なければと早いうちに前売券を買ったが、土曜のS席は完売だった。 昨年7月まで宝塚宙組トップスターだった大和悠河(やまと・ゆうが)さんが、女優デビュー作として準主役のニキ・ハリス役を演じていて、宝塚ファン層がどっと流入したため。 それが証拠に、カーテンコールの拍手が宝塚流だった。音楽のリズムに合わせた手拍子。 たとえ手拍子カテコでも、帝劇ミュージカルなら役者さんがお辞儀する瞬間は必ずパラパラパラと拍手が渦まくのだが、今回の公演では観客席は終始 一本調子の手拍子。 「あぁ、文化が違うなぁ」 と思った。 さらに集客を増したのは、主役のフランク・チョッフィ (劇中では 「チョーフィ」 にされているが、イタリア系の Frank Cioffi だから 「チョッフィ」 である) 役に起用され、宣伝ポスターにも大映りの東山紀之さんだ。 大和悠河さんで既に十分集客しているのに、少年隊出身でテレビの仕事も多い東山紀之さんまでぶつけられると、そちら目当ての人たちが大量に劇場に来てしまう。 ふつうにブロードウェイ・ミュージカルの日本語版を楽しみたいという、ぼくのような者が3階席の後ろのほうに弾き飛ばされてしまうのですねぇ…。 カーテンコールの最後に出演者のひとり、鳳蘭(おおとり・らん)さんが 「皆さま、じつは本日は私の大先輩…… いえ、ちょっとだけ先輩ですけど…… 偉大な先輩で、鳩山総理のご夫人でいらっしゃる鳩山 幸(みゆき)さんがおいでです。 大和悠河の大先輩にもあたる方です」 といって、悠河さんを抱き寄せて観客席の中央のほうを指し示してみせたあと、頭を下げた。 警備の皆さんも含め、何枚のチケットが鳩山 幸さん関連でお買い上げだったろうか。 * 東山紀之さんのきびきびとした演技。 大和悠河さんも宝塚時代の男役からスイッチして宝塚の女役ふうに裏声でセリフを言う可憐さが光っていたけれど、 歌に酔わせてくれたのは、やはり鈴木綜馬さんだし、 この公演のぼくのディーヴァは何といっても、 岡 千絵さん でした。 プロデューサー夫婦 (ちなみに鳳蘭さんと芋洗坂係長さんが演じています) の一人娘バンビ・バーネットという、ちょっとあばずれたところがあるけどダンスが得意で歌もうまい、めざせブロードウェイの若手女優という役どころです。 で、岡 千絵さんは設定どおり、みごとにうまいのです。 ふつうのドレスを着た群舞もありますが、やはり見どころは第2幕の劇中劇、キュートなインディアン娘の姿。 凛々(りり)しく羽根飾りをつけ、なぜかツー・ピースのエスニックな衣装に、パンダ色のブーツ。 これはもう、ほんとにかわいいです。 かわいいだけなら若い娘はたくさんいるけれど、岡 千絵さんはダンスに甘美な切れがあって、奴隷になってしまいたいくらい魅せられました。 岡千絵さんの2月8日のブログに、楽屋でお撮りになった キュートなインディアン娘のお姿 が出ています。 半世紀前の人たちはスカートがまくれて見えるズロースにドキッとしたけれど、今やあのミュージカルの定番シーンにドッキリ感はなく、これに替わってドキリとさせてくれるのが、たとえばこういうキュートなインディアン娘ですね。 岡 千絵さんは、平成5年に 「ピーターパン」 でデビューし、平成14年には文化庁在外派遣員に選ばれニューヨークで2年間 演技と歌を学び、帰国後は舞台出演のほか振付家としても活躍。 「美しすぎる振付家」 とは、彼女のことでしょう。 同じく 「ピーターパン」 でデビューしたという意味で岡 千絵さんの後輩にあたる笹本玲奈さんにも、ニューヨークで2年間 演技と歌を学ぶ機会が与えられますように、これから毎日、神さまにお祈りします。 * ジェシカ (劇中劇の主演女優) 「きょうの舞台は不出来ね。最初から最後までわたしに向かって腕を振り回してる人がいて、ちっとも集中できなかったわ」 付き人 「あのぉ、それは、指揮者ですよ」 「カーテンズ」 台本の第1幕はじめの笑いネタ。 今回の公演は、演出・振付のために米国からビル・バーンズ氏を招聘し、作品全体にマンハッタンの劇場の香りが漂う、いい出来ばえ。 公演期間がもっと長ければよかったのに。 (東京国際フォーラム ホールCで2月24日まで。その後、大阪の梅田藝術劇場で2月27日から3月1日; 名古屋の愛知県藝術劇場で3月7日に公演。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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