カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
「キャンディード」 3回目の観劇。
台詞の細部まで聞き取って、作品のメッセージの深みに達することができ、電流がじんじん走った。 千穐楽で、2階席のA席しか取れなかったのだが、1階席からでは分からない照明の工夫も見どころだった。 地震の場面など、窓明かりを模したスポットライトを床の上で揺さぶることで、大振動の錯覚を与えてくれた。 千穐楽の舞台挨拶は、青年キャンディードの忠実な友人にして召使のカカンボを演じた駒田 一(はじめ)さんが司会役。 駒田さん: ≪今日まで練習期間を含め2ヶ月半、我々がやってこれたのも、スタッフ、オーケストラの皆さん、そして誰よりも、ここにおられるお客さまの応援のおかげです。厚く御礼申し上げます。≫ 挨拶の一番手は、掃除夫に身をやつす悲観主義哲学者マーティンを演じた村井国夫さん: ≪「キャンディード」は決して今回が初演というわけではなく、これまでもいろんなヴァージョンのものが演じられてきたのですが、じつに分かりにくい劇なのです。 自分も過去に別の「キャンディード」の舞台で演じたことがあるのですが、やっている自分も、いったい何を言おうとしている劇なのか分からなかった。 今回のジョン・ケアード版は分かりやすく、ようやく自分もこの劇の意味がはたと分かった。 「キャンディード」を過去にやったことのある仲間たちも今回帝劇に観に来てくれたのですが 「あぁ、そういう劇だったのか」 と言ってくれた。 ロンドンにいる演出家のジョン・ケアードさん、みごとな仕事をしてくれました。 ほんとはもっと続けたいのですが、キャンディードを演じている井上芳雄君の体重がどんどん減っているということなので、この辺でひとまず終えさせていただきます。≫ 美しい男爵令嬢クネゴンデを演じて、オペラ歌手のような歌いぶりの新境地を開いた新妻聖子さん: ≪ここまでひとりも缺(か)けることなく公演を全うできてよかった。 「キャンディード」 のすばらしい世界でこの1ヶ月を生きることができて、しあわせでした。≫ 純真にして天真爛漫、クネゴンデを愛しつづける青年キャンディードを演じた井上芳雄さん: ≪この1ヶ月間、どんどん体重が減っていって、デビュー当時のころまで戻ってしまいました。≫ 狂言回しの、ヴォルテールとパングロス博士の2役を華麗に演じた市村正親(まさちか)さん: ≪わたしは舞台が大好きなのですが、こんなにずっと舞台に立たせなくてもいいじゃないかと思うくらい、今回はずっと舞台に立っておりました。 舞台で進行を眺める立場でもあったわけですが、それぞれの役者が自らに問いかけながら作品に向き合っている姿を、こうして舞台に立ち続けて眺めることができて、自分もまた多くのことを新たに学ぶことができたと思います。 井上芳雄も体重が減って大変そうで、できたら替ってやりたかったけれども (笑) 、とにかく自分も足が立つ限り、この作品をやっていきたいと思います。≫ そのあと、役者さん皆で客席へたくさんの小さな花束を投げ込み、スタンディング・オヴェーションのころには指揮者の塩田明弘さんも舞台前面に出て来られた。 劇場を出ると、外には8台のトラックが待っていた。さっそく大道具の入れ替えというわけだ。 * 帝国ホテルのバーで余韻を楽しもうと思って日比谷界隈へ行くと、シアター・クリエ前で、これまた千穐楽だった 「M・クンツェ&S・リーヴァイの世界」 に出演したサブリナ・ヴェッカリンさん (「マリー・アントワネット」ドイツ語版のマルグリット役) とパトリック・シュタンケさん (同じくフェルセン役) が、出待ちの人たちと話をしたりサインをしたり。 バーで飲んだのは、ブランデーベースのカクテル 「ボンベイ」 (ちょっと妖しい味が気に入っている) と、ジンベースのカクテル 「ブロードウェイ・メロディ」 (軽やかな春の風のよう。ピアノの音を感じる) でした。 最高の一日になりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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