カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
以前から、ぜひ自分で訳してみたかったミュージカルナンバーがある。
ミヒャエル・クンツェの Mozart! から、Gold von den Sternen. 帝劇版の小池修一郎訳では 「星から降る金(きん)」 だ。 あこがれを胸にいだき、夢を見ずにはいられない人間の本能のうずきを愛撫してやまない曲で、ドイツ語の原曲を何度も歌っては涙を流した。 幸か不幸か、日本語版の 「モーツァルト!」 は観たこともCDを聴いたこともなかった。 先日ついに銀座の山野楽器でCDを買ってしまったので、封を開く前にドイツ語原文から和訳を試みた。もちろん、シルヴェスター・リーヴァイさんの曲で歌えるように。 * キラ星を見つけに 泉 幸男 訳 むかし石の城に魔法の庭があり 王さまが王子と住んでいた 王は年をとり、希望うしない 扉閉ざし、壁をきずいて 「ここが最高」 と王は言う でも王子は外を夢見る 誰も行ったことのない かなたにキラ星ふりそそぐ 生きるとは学ぶこと キラ星みつけに行く ひとり、試練の道 「どうせ、しくじるぞ わしもそうだった 魔法の庭にいるほうがいい ここなら安全だ おまえを守る高い壁、閉ざした扉」 王さまなりの愛情は 王子の夢とは別もの さいはてに降るキラ星 つかめば夢がかなうという 生きるとは学ぶこと キラ星みつけに行く ひとり、試練の道を 愛とは解き放つこと 愛とは別れることでもある 愛とは自分を捨てること 愛があればこう言える 「はるかな、さいはての地 キラ星をさがし求め行け」 生きるとは学ぶこと キラ星みつけに行く かなたの地へ 足ふみしめ 試練に満ちた世界 試練の道へ * 小池修一郎さんの訳と歌い比べると面白いのだが、著作権のつごうで小池訳をここに掲載するわけにはいかない。 ミュージカルファンのかたは、どうか東宝CDをかけて比べてみてください。 泉訳のほうが小池訳より原文の構成に近い。 「ホシからのキン」 というのが日本語では聞いて分かりにくいので、泉訳では「(ふりそそぐ)キラボシ」 と訳してある。 小池修一郎訳の 「なりたいものになるため」 「望むように生きるなら」 が、拙訳では 「生きるとは学ぶこと」 となっている。 原文は Sein heisst Werden, Leben heisst Lernen. 直訳すると 「何かであるということは、そうなるということを意味する。生きるとは学ぶことを意味する」 といっても分かりにくいだろうから、ドイツ語を英語に直訳すると、 To be means to become, to live means to learn. やはり、分かりにくい、か。 「生きるとは学ぶこと」 という一節は唐突だから、文脈に合わせて適当に整えた小池訳の考えもわかるのだが、これをあえてリフレーンに据えたミヒャエル・クンツェさんの思いがあるはずだ。やはり、忠実な訳が捨てがたい。 「星から降る金」 は劇中、ヴァルトシュテッテン男爵夫人の歌で、東宝CDでは一路真輝さんが歌っている。 ことし11~12月の帝劇公演では幸寿たつきさんと涼風真世さんのダブルキャストだ。もちろん、観に行きます。 シナリオや歌の和訳の仕事を、いつかやってみたい。キラ星を見つけに! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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