カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
ルイス・キャロルの 『不思議の国のアリス』 を忠実にミュージカル化した舞台とばかり思っていたら、なんとこの芝居のアリスは子持ちの離婚妻で、反抗しまくる娘クロエの失踪を追いかけて不思議の迷宮に迷い込む。
あわてウサギが冒頭に出てくるけど、幕が開いたらニューヨークの編集室で小説家アリスが編集者に絞られているんだものね。 「アリス」を現代化したというよりも、「アリス」 のモチーフをつまみ食いした、悩める現代人の自己発見のお芝居だ。 そうそうたる役者さんを起用している割には、とくに第1幕はファミリーミュージカルっぽい。 子供向けの芝居だと勘違いしてホントに子供を連れてきた親は、勤労感謝の日の青山劇場には皆無だったけど、もし仮に子供が客席にいても騒がずに観ていてくれるかな、という感じ。 これが逆にぼくにはたいそう物足りなかった。こどもこどもしすぎて、観ていて気恥ずかしくなる場面も少なくない。正直、かなり失望した。 ところが、あわてウサギを演じていた田代万里生(まりお)さんが、ルイス・キャロルに扮して登場する第2幕なかばあたりから、俄然よくなった。 反抗をやめていい子になった娘の無気力・無意思の姿を見せつけられ、これまでひたすら娘を従わせようとしてきた攻撃的な自分の誤りに気がつき愕然とする母アリス。 アリスに朗々と語りかける田代キャロルの歌にしびれた。 つまづき、ころび、打たれながら、自分を再発見し、家族を再発見するアリス。現代人への切実なメッセージが伝わってきた。 * 安蘭けいさんと、悪役の帽子屋を演じる濱田めぐみさんが、歌の出番はいちばん多かったかな。 主役は安蘭けいさんだけど、舞台を率いていたのは濱田めぐみさんだったな。 娘クロエを演じる高畑充希(みつき)さんや、離婚夫ジャックを演じる石川 禅(ぜん)さんは、主役を張れる実力にもかかわらず歌らしい歌は1曲だけで、なんとももったいない。 渡辺美里さんが女王さま役で第1幕・第2幕ともごく短時間のご登場。その分、存分に声量を披露して、実力を見せつけた。 きょうは安蘭けいさんと高畑充希さんのアフタートークがあった。高畑さんが、のっけから関西辯なのでびっくり。これに安蘭さんも関西辯で応じる。 司会は、もちろん、指揮者の塩田明弘さんでした。 (青山劇場で、12月7日まで) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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