テーマ:中国&台湾(3305)
カテゴリ:中 国 界
中国の農民は、なぜ中国共産党を支持しつづけるのか。都市民になれぬ戸籍差別を受け、農民としてろくな福祉政策の恩恵もないのに。
地方の役人の不正について訴え出るため北京に出てくる人の群れに答えがある。 文革時代にも、おらが町の理不尽を“英明なる”周恩来総理に訴えようと、浮浪者のようななりの人々が上京したわけで。 地方役人がダメでも、党中央は正しい判断を下すはずだ。共産党支配がなくなったら、地方役人を正してくれるひとがいなくなるではないか。それでは困る、と農民は考える。 とつぜんこんなことを書いたのは、米国の外交問題評議会の Elizabeth C. Economy さんが産経新聞元旦号で語っていたことが、符合したからだ。 ≪産経 「重慶市のトップを務めた薄煕来(はく・きらい)氏の不祥事では、数十億ドルにものぼる薄夫妻の不正蓄財が明らかになりました」 E・エコノミー氏 「この不祥事は転換点だ。もともと不正は地方の問題で、中央の上層部は潔白だと大衆は思ってきた。 温家宝首相の一族が数十億ドルの財産を蓄えたと米紙が報道した件も、北京では誰もが知っている事実だが、地方では驚きでとらえられた」≫ 「この不祥事は転換点だ」 という一言に、どきりとした。 薄煕来や温家宝の周知の収賄問題も、エリザベス・エコノミーさんの切り口で見れば歴史の転換点と言えるわけだ。 * いっぽう、中国の都市民はなぜ中国共産党を支持しつづけるのか。 開けた社会を志向する都市民であれば、党による硬い統制を気持ち良く感じるはずがなかろうに。 いや、そうではない。浮浪者のような、無教養で粗野な農民の群れが都市に怒濤のように流れ込んで都市を占領したりしないようにするには、中国共産党による統制が欠かせない。 戸籍による差別を通じて農民の群れを都市から遠ざけてくれる共産党こそ善なのである。 都市民としては、さらなる上昇の手段がほしい。 大学を出れば、社会のエリートとして農民を搾取しながらぬくぬくと暮らしていける、そんな差別社会が望ましい。 ところが、いまや大学を出ても就職難だ。 ≪産経 「格差が社会不安につながっています」 E・エコノミー氏 「…<前略>… もちろん、高所得者が存在するのは当たり前の事象だが、高等教育を受けても成功できない社会になると民が怒る」≫ 湯浅邦弘 著 『論語 ―― 真意を読む』 (中公新書) を読んでいたら、こんなくだりがあった。 ≪儒家集団は、その出自がはっきりしない。孔子からして、「野合」 の子と言われるくらいであり、けっして由緒ある貴族の出なのではない。 そうした性格の集団であるから、彼らが政治の場で活躍するためには、学習によって自らを向上させ、俸禄にありつくほかはなかったのである。 とすれば、儒家にとって 「学」 とは、純粋な意味での学術研究なのではなく、求職活動と表裏の関係にあるものとして理解すべきであろう。≫ (139頁) 学問とは職を得、地位を得るためのものでもあるとは、万国普遍の話だろうけれど、中国の学問伝統の根幹である儒教すら、その中核に 「求職」 の概念を宿していたとは。 中国が、大学を出て求職がかなわぬ社会になると、原理的にヤバイというお話である。まさに、「民が怒る」 わけである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jan 10, 2013 12:25:36 AM
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