カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
ぼくを芝居狂いに引き入れたミュージカル 「ミー&マイガール」 にもつながる、ジョージ・バーナード・ショーの 「ピグマリオン」。
はまりました。女優の魅力がひときわ際立つのは、上品なことばを話すときでもなく、アバズレを演じるときでもなく、上品ことばに俗が混じる不思議な言葉づかいの瞬間でした。まるで言葉がセミヌードになったみたいな あだっぽさ。 第3幕後半 (新国立劇場公演では休憩前の前半の最後のほう) のイライザが最高に好いわけです。 ≪こんなに頑丈な伯母がインフルエンザごときで死ぬわけがない。私がもらうことになっていた伯母の新しい麦わら帽子はどうなったんでございましょう。誰かがちょろまかしたに違いありません。つまり、帽子をちょろまかしたやつが、伯母をやっちまったってことですわ。≫ (小田島恒志さんの訳本 133頁) 長ゼリフも多く、言葉の諸相を縦横にかけめぐるイライザの役は、女優にチャレンジを強いる。自分が心酔する女優にとことんチャレンジさせてみたいと大女優パトリック・キャンベルのためにアテ書きしたバーナード・ショーの気持ちが痛いほどわかります。 石原さとみさん、とってもかわいかった! 彼女を指導するヘンリー・ヒギンズ教授がとことんひねくれもので、「マイ・フェア・レディー」 の映画やミュージカルとは異なる展開です。 その第5幕。 ひねくれ教授を、一直線の傲慢男として直球勝負で演じつづける平岳大さん。ちょいとあのヒギンズは、浅すぎ、若すぎないかな。変化球がほしい。 演出の方針がそういうことなのかもしれないが、あのヒギンズ教授には乗れなかった。 さいしょのうち、感受性に乏しいヒギンズに多少は身につまされるところも感じつつ観ていたわけですが、やがて心は離れた。 平岳大さんのヒギンズには 「かわいげ」 をまぶしてほしかった。 ガサツさはコミュニケーション下手のなれの果てなのかなと、いささかの同情心も さそうようなヒギンズ像は、ありえないだろうか。 ヒギンズへの嫌悪が鬱積しきって、最後にイライザが飛び立ってゆく爽快さで暗雲解消とはいかぬまま、幕。 う~~ん。 そういう劇なのかもしれないが、たとえば市村正親さんや鹿賀丈史さんが演じたなら、憎たらしいヒギンズにも かわいげが備わったろう。 きのう11月13日の初日公演会場には作品をこの公演のために新たに訳した小田島恒志(こうし)さんと、その偉大な父・小田島雄志(ゆうし)先生も来られていた。雄志先生の隣におられたのは奥さまで、その隣に立つ青年は恒志さんの息子さんだろうか。 終演後、ロビーの恒志さんに 「すばらしい作品、ありがとうございました」 とご挨拶した。 新国立劇場公演 「ピグマリオン」、12月1日まで。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Nov 14, 2013 11:45:09 PM
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