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Apr 18, 2014
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テーマ:中国&台湾(3304)
カテゴリ:中 国 界
 【平成26年4月16日の配信コラム 読者登録はこちら

 最近2回にわたり、韓国人メンタリティ (精神構造) を取り上げました。「二者が親しい関係を結ぼうとするときには、兄と弟にあたる上下関係が想定され、平等主義から遠ざかる」 という仮説です。

 中・朝・韓は、この 「上下関係」 原理に支配されているから執拗に日本を 「下」 に置きたがるのではないか、というのがわたしの仮説でした。

 ところがこれに反して、中国人 (漢人) メンタリティの根底には平等主義があるという説を読みました。

■ 歴史人口学者の悲観論 ■

 論者は、フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド (Emmanuel Todd) 氏。
 日経ビジネスオンライン上のインタビュー、題して 「後退する中国、大惨事のヨーロッパ」 から、中国に関する部分だけ ≪ ≫ 内に引用し、わたしのコメントつきでご紹介します。

【全文は、以下のサイトで読める】
http://nkbp.jp/1hp0tWu

≪私 (= エマニュエル・トッド氏) は中国については、非常に悲観的だ。ほとんどの歴史人口学者はそうだと思う。その人口が膨大であるのに対し、出生率が極端に低いという問題を抱えている。中国は全員が豊かになる前に高齢化社会に突入する。

他方、社会保障制度が未整備で、男の子を選択するための偏った人工中絶が行われている結果、男女比率のバランスが取れていない。≫


 高齢化社会になっても、最低限の自給自足が成り立てば何とかなるかも。しかし今の中国は、都市のみならず農村部まで、自然の水源 (河川と地下水) を工業廃水で汚染してしまった。

 雨が多く降り、河川が短い日本と異なり、中国大陸は比較的雨が少なく河川が長大で汚染が滞留沈殿する。環境を破壊し、自給自足経済もままならなくなったところで、高齢化社会に突入するわけですね。こりゃ地獄だ!

■ 中国という巨大な植民地 ■

≪経済については、膨大な輸出能力を持っている。しかし、私はこの国が自分で運命を操れる怪物であるとは思わない。共産党のビートルズ (成功した世界的スター) ではなく、西側が経済成長を実現するための輸出基地と言える。利益率を上げるために中国の安い労働力を使うことは西側にとって自然な決定だった。≫

 「西側が経済成長を実現するための輸出基地」 とは、短く言えば 「植民地」 ですよね。要すればトッド氏の説は 「西側が現在進行形で中国を植民地化しているのは自然な決定だった」 と言っているのに等しい。さすが西洋人だ!

 そのプロセスにおいて買辨 (ばいべん = 植民地支配者の手先となる現地の利権者) はさしずめ中国共産党でしょう。

≪現状の中国経済は設備投資比率がGDPの40%、50%に達している。それは経済バランスから見て異様であり、スターリン時代の旧ソ連がそうであったように、経済が非効率であることを示している。≫

 設備投資を一気に集中的に行ったから、陳腐化・老朽化も一気に起こるわけです。おそろしいですね。

■ 兄弟間の平等主義 ■

 さて、ここからが、取り上げたかった本題です。

≪中国の社会はどうかというと、これも非常に不安定だ。中国社会で素晴らしかったのは、平等主義だ。特に兄弟間の平等性が重視されてきた。中国で共産主義革命が起きたのも、社会に平等主義の信念があったからだ。

ところが、近年の経済成長にともなって、不平等、貧富の格差がすさまじい勢いで拡がっている。社会には依然として平等主義の考え方が根強いため、潜在的な政治的不安定度が高まっていくだろう。

中国共産党が国民に対し、ナショナリズムや反日感情を強調する理由が分かる。≫


 このくだり、二重線で下線をぐいぐい引きたくなりました。

 韓国の兄と弟の上下関係の厳しさは、「儒教の影響」 と説明したくなるところですが、儒教の本家本元のはずの中国では 「兄弟間の平等性が重視されてきた」 というわけです。はて?

■ やはり著作を読んでみないとね… ■

 トッド氏の説を受けての、わたしのひとつの仮説としては、漢人の根底にある平等主義がもたらすカオス (混乱状態) を是正すべく、漢人の本性とは異なる秩序規律として形成されたのが儒教だったのではないかな。
 その儒教規律を、漢人の本性と信じて自国に徹底させたのが朝鮮なのかも。

 かりに中国共産党の反日教育が干渉することなく、漢人が本性のままに振る舞えたなら、漢人なりの 「兄弟間の平等主義」 は日中関係にも生かされたものでしょうか。

 トウ小平時代の中国の対日政策には、あるいはそういう平等主義があったのかもしれません。しょせんは実利のための、身勝手な平等主義だったとはいえ。
 多くの日本人が 「日中友好」 で だまされた。

 「エマニュエル・トッド」 の項をウィキペディアで読んでみると、家族の形態が国民性を作っているという説がおもしろかった。トッド氏の著作を読んでみようと思っています。

 トッド氏について激しく批判しているブログもありました。
http://megu777.blogspot.jp/2012/05/blog-post.html
 誰が正しいか、わからなくなってきました。やはり、トッド氏の著作そのものを読んでみて、自分の脳で考えないとダメですね。

■ GDP総額は有効な指標か ■

≪GDPでの日本と中国の比較は意味がない。
なぜかと言えば、中国ではいろんな階層の人たちが何とか一緒に暮らしているのに対し、日本は人口の半分ほどが大学など高等教育を受けて卒業して働くという社会構造になっている。≫


 最近は、一国のGDP総額ではなく 「1人あたりのGDP」 を指標にすべきだという論者が増えてきました。わたしも同感。

 「1人あたりのGDP」 とは、その社会が個々人の貢献をどれだけ効率的・建設的に生産高へと変換できるかを示すもの。つまり、社会構造の質を示す指標であるわけです。

 もしかりにどうしても地域のGDP総額を云々したいなら、むしろ 「日本」 にとどまらず 「日本+台湾+ASEAN」 を指標にして、台湾・ASEAN諸国を含めたトータルの繁栄を企画するのが正しい道だというのがわたしの持論です。

■ キャッチアップからリードへ? ■

≪中国が経済指標で先進国にキャッチアップするということと、中国が世界をリードして将来をつくっていくということは別問題。
中国が米国より効率的な社会となると考えるのはナンセンスであり、単独で支配的国家になると予想するのも馬鹿げている。

中国は共産主義体制から抜け出し、前進していると自分で思っているはずだが、私の観点からは、逆に後退しているように思う。≫


 いま、中国にあこがれる人たちが世界にどれほどいるものなのか。やはり、あこがれられる存在にならないと、世界をリードすることはできません。「リードする」 と 「暴れる」 は違う。

 山水画のなかの小川のほとりの家に住み、詩歌と琴と碁に時を忘れるような境遇になるのも悪くないと思いますが、今ではよほど辺鄙(へんぴ)な上流に行かねばそんな小川には出会えないようです。





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最終更新日  Apr 20, 2014 07:27:38 PM
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