カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
ミュージカル女優・笹本玲奈さんのファンクラブイベントは欠かさず出てますが、今年はとても充実していました。
何といっても、彼女自身が人として成長して、当たりがやわらかくなった。以前は、気負いを発散させていましたが、いまは自然にひとと やわらいでいる。おとなの女性になって、そして一段と美しくなりました。 以下、彼女のトークの前半部分(演劇関係)から抜粋です。ちなみにトーク後半は出演したコンサート関連でした。 ◆ジャンヌ◆ 自分がずっと演じたかった役が5つありました。レ・ミゼのエポニーヌ、ミスサイゴンのキム、ガイズ&ドールズのサラ、ミー・マイのサリー、そしてジャンヌ・ダルクです。昨年9月に「ジャンヌ」を演じて、この5つを20代のうちに演じることが、かないました。 文学座の皆さんに囲まれて、女性ひとりポツンでしたけど、稽古中は毎日戦争でした。今までになく長い台詞(せりふ)でしたから。 これまでのお芝居では、稽古期間の前に3日間だけ椅子に坐って台詞だけひたすら読んでいたのですが、「ジャンヌ」は10日間、台詞だけの練習をしました。 出づっぱりで衣装も重いし、長い台詞が各シーンにあるんですね。 最後の裁判シーンは説明台詞が多いのですが、地方公演で台詞を3頁飛ばしてしまった俳優さんがいたんです。どうやって巻き戻そうかと舞台上のみんなが助けようとしていろいろ台詞をトライするんですが、戻そうとする台詞がひとによってポイントが違って、うまくいかないんです。1分ちかく、しーんとしてしまって。1分の空白のあと、どなただったか、うまく続けて、それでまた舞台が回り出したんですが。 じつは飛ばしてしまったのは某##さんでした。(注:お名前はブログには書かないことにします) 大先輩でもそんなこともあるんだなぁと。 ところが##さんは舞台が終了するまで自分が間違えたとは思ってなくて「誰だよ、次の台詞は !?」と思っていたそうで、じつは自分の間違えだと分ったあと、新幹線に乗るまでの時間にレストランでおごっていただきました。 演じる前にフランスのオルレアンに行きました。ジャンヌの住んでいた家も建て直されてレプリカが建っています。河のあっち側とこっち側で敵味方が向かい合った場所にも行きました。舞台で台詞を言いながら、その場所の絵が浮かんでくるんですね。 「ルドルフ」のマイヤーリンクにも行ったことがあります。建物は変わっていても、風景は変わっていません。実際にあった出来事に基づくお芝居を演じるときは、その場所を見たほうがよいと思いました。 ストレートプレイ(注: ミュージカルではない台詞劇)は来年も1本、予定しています。ミュージカルをやるにしても、歌がうまいだけではダメで、基本はお芝居ですから、ことばだけで伝えることができないといけませんね。 わたしの演じる役は悲劇的結末のものが多いのですが、コメディーも率先してやっていきたいです。 ◆クリスマスキャロル◆ 稽古がレ・ミゼの本番中だったので、迷惑をかけてはいけないと思って一旦はお断りしたのですが、市村正親さんがすごく推してくださって。市村さんの40周年記念の作品でもあったのです。 市村さんは、1998年にわたしがピーターパンにデビューしたとき初日に観に来て楽屋に来てくださって、そのときイギリスのピーターパンの銅像が立っている公園でお撮りになった写真にサインしてわたしにくださったんです。「いつか、共演できるように頑張ろうね」って。 舞台でご一緒できたのは2004年の「屋根の上のバイオリン弾き」でした。 市村さんはわたしにとってミュージカル界のパパです。いつも目を光らせてわたしの演技を見ていてくださり、いろんなアドバイスをくださいます。 ◆ラブ・ネバー・ダイ◆ 衣装の早変わりをする「水着の美女」では最初の段階で7枚重ね着しているので、このままでは雪だるまになっちゃうと思ってダイエットしました。 久々にダンスもあって、ミュージカルらしい作品でした。 わたしの演じたメグは、前半はひたすら明るい人柄で、最後に本心が見えてくるのですが、演出家さんから「ここはお客さんをだましてしまおう!」と。淡々と演じて最後にはぜる役はやりがいがあります。 ダブルキャストの彩吹(あやぶき)真央さんは宝塚のかたなので、立ち方や踊り子さんとの距離感を学ばせていただきました。 ラウルとファントムのどちらを選ぶかと言われたら、ファントムを選びますね。ラウルも最後はせつないですけど。 ラブ・ネバー・ダイIIがあったら、どういう話になるのかなぁと考えます。ファントムとクリスティーヌの息子であるグスタフを、この先はファントムとラウルが立派に育てて……とか。みんなが不幸になるのはかわいそうだから、メグもどこかの国に母親と一緒に逃げて、結婚してハッピーになってほしい。 5つの役がダブルキャストなので、いろんな組み合わせで稽古をします。相手が違うと、こちらの演じ方も変わります。市村さんと鹿賀丈史さんは、個性のちがうファントムだったので、わたしの演じるメグも動くポイントとかいろいろ演じ違えました。そういうことが楽しかったですね。 市村さんと鹿賀さんの違いが楽しかったです。市村さんは、ついていきたいと思わせるファントム。鹿賀さんは、あなたの才能をまもってあげたいと思わせるファントムでした。 ◆ミス・サイゴン◆ 新演出のロンドン公演のオープニングに招待状をいただいて、市村正親さん、駒田一(はじめ)さんとともに行きました。 新演出は、人数も増え、セットも変わり、ヘリコプターも再登場ですし、すごく変わったなという印象で、違和感さえ感じたほどでした。2012年演出の映像のヘリコプターに慣れてしまっていたんですね。 今回の帝劇公演は、ロンドンの新演出をそのまま持ってきています。 2012年は青山劇場という小さなハコでしたが、今年の帝劇は大きなハコなので、同じセットでも場所を広く使います。2階席のいちばん奥の席にいらっしゃるお客さまにも伝わるお芝居をしなければなりません。 わたしがキムをはじめて演じたのは19歳のときで、そのときはまっすぐストレートに子供を守りたいという気持ちを歌いました。 しかし人間は迷いや弱さもないわけではない。クリスを信じていると口では言っていても、本心ではやはりクリスは戻って来てはくれないとも思う。でも、ことばでもって「クリスを信じている」と言って、自分を奮い立たせているのがキムなのだと気づきました。弱さが勝って、涙が出ることもある。 演出のダレン・ヤップさんも「強いだけの人間はいない。弱い面も見せればいい」と言ってくれて、自分もそのほうがやりがいがありました。 トゥイとの対決の場面でも、キムにはきっと「このひとと一緒になれば苦労もなくなり、子供もしっかり育てて安定した生活ができるかもしれない」という思いがよぎったはずだとダレンは言うんですね。トゥイをキムが殺したとき初めてキムは「迷いはない」と本当に強い気持ちになって「命をあげよう」を歌い上げる。 過程がちゃんとあった上での「命をあげよう」なのです。 2004年から10年間で154回のキムを演じることができ、ぜいたくな経験でした。 イベント恒例の「歌のコーナー」は、レ・ミゼ笹本エポニーヌの歌「オン・マイ・オウン」と、平原綾香さんの「おひさま ~ 大切なあなたへ」。 「おひさま」の歌詞は、ミス・サイゴンのキムのことばとして聞くこともできますね。 イベントの最後、笹本さんにひとことお伝えしました。 「35歳になるまでにぜひアメリカかイギリスでお芝居をやってください。 もう日本では極めちゃったところもあるし。 イギリスには演出家のジョン・ケアードさんもいるし」。 笹本さんは「え!?(できるかな??)」という反応でしたけど、5年計画で新たな高みを目指してくれればと祈っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Nov 25, 2014 09:36:57 PM
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