テーマ:読書(8439)
カテゴリ:読 書 録
Raymond Carver さんが、こんなことを言っていて、ぼくの心のちょっと陰った部分にビビッときた:
≪いつもうまくいっている人たちはいますよ、そうなったらすごいなと思いますけどね。でも、その一方で、しようとすることが、一番やりたいことが、大小にかかわらず人生の支えとなるものが うまくつかめない人たちがいる。 そういう人生こそが書くにふさわしいんです。うまくいかない人たちの人生。わたし自身が経験してきたことも、直接的ないしは間接的に、そういう状況になってしまうものばかりでしたから。 わたしの登場人物たちのほとんどは、自分の行動が大事なものになってほしいと願ってると思います。しかし同時に、そうはならないと承知してるところにまで来てるんです。じつに多くの人たちがそうであるように。もう全然意味がないと思ってる。 かつては大事なことだと思い、必死に求める価値のあるものだと考えていたものが、一銭の価値もなくなった と。自分の人生が不快なものになり、人生がこわれていくのが目に見えている。なんとか立て直したいが、しかしできない。そして大抵の場合、彼らはそういうことがわかっていて、そのうえで やれる範囲でベストなことをしてるんだと思います。≫ (227頁) Carver さんは、小説を本格的に推敲するのは第3稿や第4稿をつくってから。詩は40回から50回は書き直すのだと。あぁ、それに引き比べると、ぼくなんか、甘い。 あこがれている作家について聞かれて Carver さんは止まらなくなった: ≪アーネスト・ヘミングウェイですね、まず。初期の「ふたつの心臓の大きな川」、「雨のなかの猫」、「三日吹く風」、「兵士の故郷」、その他どっさり。 それからチェーホフ。チェーホフが好きでない人っているんですかね。わたしが言ってるのは小説のほうですけど。戯曲ではなく。かれの戯曲は動きがスローすぎます。 トルストイの短篇はどれもいい。そして中篇。そして『アンナ・カレーニナ』。『イワン・イリイッチの死』、『主人と下男』、「ひとにはどれほどの土地がいるか」、これらのトルストイは最高です。 それからイサーク・バーベリ、フラナリー・オコナー、フランク・オコナー。 ジェイムズ・ジョイスの『ダブリンの市民』。 ジョン・チーヴァー。 『ボヴァリー夫人』。去年、この本を読み返したんですよ。それを書いていたときのフローベールの書簡の新訳といっしょにね。完璧です。 トバイアス・ウルフの短篇集『北アメリカの殉教者の庭で』。 マックス・ショット。ボビー・アン・メンソン。ハロルド・ピンター。V. S. プリチェット。≫ (233~234頁) パリ・レヴュー・インタヴューI 作家はどうやって小説を書くのか、じっくり聞いてみよう! (岩波書店、平成27年刊) 青山 南(あおやま・みなみ)編訳 『パリ・レヴュー』誌の作家インタビュー集、さきに読んだ 第II巻(抜き書きはここをクリック) のほうが面白かったかな。第 I 巻は11名の作家のインタビューを収める。 Isak Dinesen: ≪最近のだとオルダス・ハクスリーの『クローム・イエロー』を初めて読んだときのことは覚えてる。未知の、さわやかなフルーツをかじったって感じだった。≫ (16頁) Toni Morrison さんからの入れ知恵: ≪学生たちに言ってるのは、どういうとき自分はベストな状態にあるかを知っておくのがなにより大事だということ。しっかり自問しておく必要がありますよってね。 自分にとっての理想の部屋とはどんなものか。音楽は欲しいか。沈黙が欲しいか。自分の外側は混沌としていたほうがいいか、平穏であったほうがいいか。自分の想像力を解き放つにはどういうものが必要か。≫ (287頁) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
May 29, 2016 07:25:35 PM
コメント(0) | コメントを書く
[読 書 録] カテゴリの最新記事
|
|