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関本洋司

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2004年09月16日
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カテゴリ:コラム
 9月9日、慶応大学三田校舎で中国から二人の文学者を招いて講演会が開かれた。
 中国淪陥期(日中戦争期に日本帝国の支配下にあった北京を中国側はこう呼ぶ)を代表する梅娘さんという女性作家の講演だった。張泉さんという男性の評論家も一緒に講演した。
 最近、北京でのサッカーアジア杯におけるブ-イング問題等、日中関係は冷えきったものになっている。民間で経済活動は盛んになっていても政治家たちはアジアにおけるヴィジョンを持っていないことが問題の根本にあると思う。

 日中関係に関しては、僕には国交正常化から数十年でよくここまで来たという思いもあるが、日中戦争期の文学者の営みがもっと知られていいと思う。
 梅娘さんにせよ、彼女より若いその時期を研究する張泉さんにせよ、親日とレッテルを張られた中国人作家達の苦闘は、今の日本人の想像を絶するものがある。最初の張泉さんの講演も梅娘さんを含む親日とレッテルを張られた中国人作家めぐる評価の議論を現在進行形で伝えるものだった。
 そうした苦労(上記のように現在進行形でもある)を少しでも知ってもらうことと、そうした苦難の歴史を忘却しないことが、次の世代の真の友好をつくり出すと思う。

 梅娘さんに関しては、中国におけるフェミニズムの嚆矢でもあるので、より重要な位置にいる作家であるのは確かだ。そして、その評価のすべてを政治的な権力のもとで左右されることがないようにしたい。
 講演は、彼女の日本文学翻訳家としての側面を明確な記憶とともに振り返るものだった。御高齢にもかかわらず、梅娘さんは瑞々しい感性を持っていた。
日本の若い女性聴講生から携帯電話で写真を撮らせてくれとせがまれて、笑顔で受け答えしていた姿が印象的だった。

 追記:
 この時期の文学に関しては、僕は『交争する中国文学と日本文学』という研究書に共同研究者の一員として参加した際、武田泰淳に関連して少し書いたことがあります。





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最終更新日  2004年09月16日 00時56分30秒
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