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関本洋司

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2004年09月27日
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カテゴリ:コラム
 以下は、プルードンによる、系列弁証法の観点から位置づけられた「相互性」(「矛盾」に続く第二の法則)の解説であり、また「相互性」という交換銀行の基本理念の表明である。後者に関してはより具体的には定款を見るべきだが、その論旨は明解なものであり、現代にそのまま通じるものでもある。

 「・・・相互性は、創造物においては、存在の原理である。社会秩序においては、相互性は社会的現実の原理であり、正義の公式である。それは、思想、意見、情念、能力、気質、利害の永続的な敵対を基礎とする。それは愛そのものの条件である。
 相互性は、『自分にしてほしいことを他人にたいしてなせ』という掟において表明される。経済学はこの掟を『生産物は生産物と交換される』という有名な公式に翻訳した。
 ところでわれわれを貪り食う悪は、相互性が無視され、破壊されることから生じる。救済策のすぺては、この法の公布のなかにある。われわれの相互関係の取扱化、ここに社会科学のすべてがある。
 したがって今われわれが必要としているのは、労働の組織化ではない。労働の組織化は、個人的自由の本来の対象である。労働をうまく行なうものは、利益を得るだろう。この点では、国家は勤労者にたいしてこれ以上言うベきことをもたない。われわれに必要なこと、私が勤労者の名において要求することは、相互性すなわち交換における正義であり、信用の組織化である。」(阪上孝訳、「信用と流通の組織化と社会問題の解決」、1948年3月31日発表のパンフレット、『資料フランス初期社会主義二月革命とその思想』河野健二編、平凡社、p338より)

 上記の文章の中で、相互性の定義を「生産物は生産物と交換される」「交換における正義」「信用の組織化」と書いている部分が有名であり、また重要だと思う。「生産物は生産物と交換される」という部分はマルクスの言うように労働価値と労働生産物とを混同しているのではなく、労働の価値を明確にしているのであり、相対(あいたい)での契約を重視することによって、交換の理念的土台を明瞭にすると共に、統制された計画経済ヘ陥る危険を回避するという知恵でもある。
 また次に、前回引用した「政治問題と経済問題の同一性、解決の方法」(「人民の代表」1848年5日9月発表分、『資料フランス初期社会主義二月革命とその思想』河野健二編、平凡社、p344)より、社会全体をいかに捉え、改革の方向性をどうするかという彼の思想の核心部が明確にされている、その後半部を紹介したい。

 「・・・人間の王権を廃止したように、貨幣の王権を廃止することが重要である。市民間の平等を樹立したように、生産物間の平等をつくり出すこと、全員に選挙権を与えたように各商品に代議能力を与えること、われわれが王権や大統領制や執政官(ディレクタトワール)の仲介なしに社会の統治を組織しようとしているように、貨幣の媒介なしに価値の交換を組織することが、重要である。要するに、政治的次元で行なおうとしていることを経済的次元で行なうことが重要なのである。それがなければ、革命は重要な部分を欠くことになり、不安定になるであろう。
 したがってこの二つの改革、すなわち経済的改革と政治的改革は緊密に結び付いている。両者はそのどちらが欠けても実現されえない。政治組織を経済組織から分離することは、絶対主義に後退することであり、現実ではなくて意見を法とつねに取り違えることである。それは、進歩を妨げることである。
 真に革命的であるためには、新しい基本構造が、この学派の言葉を用いることを許していただければ、主観的であると同時に客観的であること、それが人間と同様に物のあいだにおいても平等の組織であることが必要である。生産物間の均衡は市民間の正義と同じものである。こうして正義は、われわれにとっては、具体物であると同時に理念的存在である。そして一八四八年革命はとりわけ経済的革命であるから、われわれはまさに経済科学にたいしてこそ、新しい共和的原理を求めなければならないのである。
 信用と流通を組織すること、一言で言えば銀行を創出すること、これが、経済的基本構造と同時に政治的基本構造の出発点である。同じ等式が社会問題と国家の問題の解決に役立つであろう。同じ定式がこの二つの解決を表わすであろう。」(阪上孝訳)

 上記の文章からはプルードンの、政治革命ではなく社会革命を重視するスタンスがより明瞭にわかると思う。当時、人々が政治革命に熱狂的する中で、プルードンのこの態度は特筆すべきものだった。
 技術的な点をより具体的に言うと、同年発表された交換銀行定款によれば、貴金属貨幣は交換券で払いきれない端数にのみ使用される予定だった。 
 プルードンの論旨は題名を見れば明らかだが、8日発表分の文章よりも、その後半部に当たる9日のこの文章の方が、プルードンの経済重視のスタンスをより鮮明に表していると言える。また、「こうして正義は、われわれにとっては、具体物であると同時に理念的存在である」という箇所は、「イデア=レアリスム」というプルードンの方法論を示していると言えよう。 
 先にプルードンのアイデアとLETSの理念との類似性を指摘したが、「信用と流通を組織すること、一言で言えば銀行を創出すること」という部分を見るならば、当然ながらこれらは今日の市民バンクの試みとも繋がるものであり、交換銀行案が却下された後にプルードンが提出した、広く出資者を募る形にした人民銀行案においてはよりその傾向が強くなる。
 ちなみに、「貨幣の王権を廃止する」という方向性は、マルクスの価値形態論から見ても、正しいのではないだろうか。





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最終更新日  2004年09月27日 22時50分28秒
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