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関本洋司

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2004年10月19日
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テーマ:戦争反対(1190)
カテゴリ:コラム
 リチャード・アッテンボローが制作したガンジーの伝記映画は、ガンジーの一面しか伝えていなかったと思います。西欧人がガンジーを伝えると、たいがい聖人ガンジーとして骨抜きにされます(*)。 ガンジーの肝心なところは彼に経済的分析能力、代替案作成能力があったということなのに。
 有名な塩にかかる重税に抗議のポイントを置いた「塩の行進」などは、もちろん象徴的な役割りもありましたが、彼が税金の設定という経済的問題に焦点を合わせていたことを示しています。

 綿紡ぎ車(チャルカ)などの普及を身を持って推進したのも、自立分散的生産手段を各自が持っていた方がいいということであり、これはいまだ歴史的に見てもイギリスマンチェスターに対抗し得た唯一の原理でしょう。
 これは大量生産大量消費で一部に利益が集まり、それを分配すればいいと考えるのではなく、生産の現場ですでに分配が行なわれていなければならないという考え方です(生産と消費が分散されるべきという考え方はプルードンにも通じますし、後述しますが情報産業のもとでは今日的に見て合理的、現実的なものになっています)。
 もちろん、ガンジーがヒンズー教徒であるという限界がパキスタン問題で露呈しましたが、これはガンジーに当たる人間がパキスタンのイスラム教徒から出なかったことに遠因があると僕は考えています。現在でもイスラムの政治主義、西欧の神秘主義がガンジー像を意図的にゆがめてしまっているのです。
 こうしたガンジー像を正すのには彼の自伝(中公文庫)もいいですが『ガンジー自立の思想』(地湧社)(*)を読んでいただくのが一番いいと思います。ちなみに岩波文庫の同種の本はなぜか経済の分野のコメントが抜けてしまっているから推薦できません。
 今日、インドでチャルカは広まってませんが、自立分散的生産が重要であるという考え方は、広くエネルギー問題に浸透していますし(ちなみに原発は「管理集中型」の典型です)、何よりもインドで盛んなIT関連の企業形態にも参考になるでしょう。
 イギリス帝国からインド独立を勝ち取ったガンジーの非暴力闘争には、経済的裏づけがあったということはいくら強調しても強調し過ぎることはないと思います。

ガンジー


 チャップリンが、生前ガンジーに会っていることが特筆されます。彼の伝記にはインドでガンジーに会った際、ガンジーが如何に鋭い人物であったかが記されています。
 チャップリンは、ガンジーにその機械嫌いに関して質問をし、ガンジーはそれに対して「人民のための機械ならいい、人民を搾取する機械はいらない」といったように答えたといいます。
 チャップリンにとって生産の現場で分配が行なわれていなければならないという考えは、当時の映画作りからは理解できないでしょうが、今日では、制作方法、投資方法の変化で映画にも当てはまる考え方になってきていると思います。
 また、チャップリンは以下のようなソロー(これにはガンジーも影響を受けた)や石橋湛山にも似たガンジーの言葉を伝えています。
 「~彼はまた、こんなことも言った。最高の独立とは、一切の不要なものをふりすてることであり、また暴力は、必ず結局において自滅するというのだった。」(『チャップリン自伝・下』新潮文庫p311より)






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最終更新日  2004年10月19日 00時40分21秒
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