「9・11倶楽部」馳星周著
9・11倶楽部「9・11倶楽部」馳星周著久しぶりにTVよりも、ゲームよりも何よりも先に本を読みたいと思った作品。ストーリーの舞台は、新宿・新大久保・池袋・明治神宮・川口と馴染み深い?場所が多く出てきて、自分的に非常に臨場感がある。主人公は、歌舞伎町付近が管轄である救急救命士。彼には暗い過去があるのだが、それはストーリーが進行してくると、少しずつ明るみになってくる。その彼が仕事で出会った少年少女たち。後で彼らが国籍の無い子供達であることが判明。数年前から新宿などで実施されている浄化作戦で、大陸から来た外国人が不法滞在者として摘発・本国へ強制退去をさせれた親たちが日本に残していった子供たちが、肩を寄せ合って大都会のはざ間で生活していたのだった。非常に危うい状態での生活に少しずつ歯車が狂い、真面目な仕事人だった主人公も思いもよらぬ運命に流されていく…。そして、「9・11」への計画が。お薦めですが、読み終わったあと、子供がいるお父さんには、何かやるせない気持ちが残るのでは?◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆「織田さんになにかあったら、ぼくがトモを殺すから」震えてはいるが、浩の意志がはっきりと伝わってくる声だった。◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆笑加はわたしの胸に顔を埋めた。わたしのシャツが涙で濡れるまで、それほど時間はかからなかった。◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆だが、手に入れるために死に物狂いの努力をしなくて、どうして夢を掌中に収めることができるというのか。無理を無理と承知でそれに手を伸ばすことで初めて、夢は形をなすのではないか。たとえ離れ離れになったとしても、この身を獄中に置くことになったとしても、わたしは父親なら当然するだろうことをするだけだ。あの子らにどう思われようとかまいはしない。わたしはわたしがしたいことをする。