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カテゴリ:杉山千佳(子育て環境研究所)
先日行われた厚生労働省少子化対策特別部会に、以下の2つの
意見書を提出しました。 ご参考まで。 このところの議論を通じてつくづく実感するのは、わたしは 非常に「現実的」なヤツだ、ということです。 「言うのはいいけど、できるの?」と、そればかり、気になって しまいます。 意見もそんな感じ。 舌足らずな点もありますが、その点を踏まえて読んでいただ ければ幸いです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「保育の質」に関する意見 セレーノ 杉山千佳 1.保育環境について、以下のような調査を行う必要がある のではないか ・平成に入ってここ20年間ぐらいで、子育て・子育ちの環境に どのような変化が起きたか? *「少子化」によってどう変化したか (子ども同士の自然な関わりができづらくなったのではないか? それによって、子どもはどう変化したか) *「親の就労形態」の変化によって、どう変化したか (労働時間が長くなることで、親子のかかわりの時間が短くなっ ているのではないか? それによって子どもはどう変化したか) *「地域環境」の変化によって、どう変化したか (親しいご近所や祖父母がいないために、子どもが親以外の大人 と関わる時間が短くなっているのではないか? それによって子 どもはどう変化したか) ・少子化対策が本格化して、保育士の職場環境はどのように変化 したか? *労働時間、雇用形態など 私の個人的な懸念は、公立保育所の保育士たち(特に団塊の 世代)の長年培ってきた「保育の技」が、この民営化の流れの中 でどこにも伝授されないまま、消えていってしまうのではないか ということ 2.「保育の質」にはこれが必要、あれが必要と、どんどんと プラスしていくことには限界があるのではないか 言葉で言うのはたやすいが、現場で子どもたちや親たちのために それができなければ、あまり意味がないと思う。大事なのは、 「保育現場において、実際にやってみせられる」ことであり、 人材育成も理論ばかりでなく、「体現できる」ように指導する方 法に切り替えていくことが必要なのではないか。 3.子どもとどう関わるのかといったスキルは、相当磨いている ように思うが、職場のマネジメントのような面も重要ではないか。 特に「ケアの職場」のマネジメントは、普通の企業の職場のマネ ジメントとはだいぶ違ってくると思われる。効率重視などといい 加減なことは言ってはいられない。保育士一人ひとりの特性と能 力を最大限に発揮するためのマネジメントのあり方についても、 検討していく必要があると思う。 4.保育園、保育士だけでは限界がある。「地域のつながりのな かで子どもを育てる」ためには、保育園や保育士はどのような役 割を果たせばよいのかについて、改めて検討する必要があるので はないか。親や地域のおじさん、おばさんの代わりを保育士が担 うことはできないし、地域の自然の中で子どもたちが成長するこ とも大いに期待できる。保育士にできないことは何かを整理し、 そこをどのように補っていくか、その方法論も構築していく必要 があるのではないか。 (参考) 「男性の目」「女性の目」 「男性の目」は対象を自分と切り離し、客観的に見る。それは 全体よりも、ある部分を切り取り、その部分を明確に認識する。 「女性の目」は、自他の未分化な状態のまま、主観の世界を尊重 しつつ、ものを見る。それは明確さを犠牲にしても全体を把握し ようとする。実のところ、われわれは現象を見る際に、この両方 の目を必要とするのであろう。 (中略) われわれが現象を始終「男性の目」で見て、そこに一般化を行う ときは誤りが生じない。しかし「女性の目」で見たことを一般化 しようとするときは、細心の注意が必要である。普遍から普遍に 至る道はわかりやすい。しかし、個より普遍に至る道を探そうと するときーそれこそが新しい保育学には必要なのだがーー、よほ どの注意が必要なのである。 (中略) このように考えてくると、今まで培われた「男性の目」を否定 することなく、そこに「女性の目」もともに用いることによって、 新しい保育学が築かれるのではないかと思う。そのためには、 女性がその能力を十分に発揮して、新しい学の建設のために参加 することが期待されるのである。 (『子どもと学校』河合隼雄 岩波新書 より) 以上。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 認可外保育園に関する対応についての意見 セレーノ 杉山千佳 これまで「行政の責任の範疇は、認可保育園まで」「保育の質 が保たれるべきは認可保育園だけ」といった対応が長く続いて いた印象があったかと思いますが、前回の部会で、認可外保育 園についての詳細な報告が出されたことは、大いに評価すべき 点であったと思います。 ベビーホテルのような認可外保育園には、ともすると、もっと も児童福祉的な対応が必要な親子が存在する場合が少なくあり ません。 早急になんらかの対応を行っていく必要があるのではないかと 思います。 まだまだ議論が必要かと思いますが、個人的な提案としては、 ・認可保育園、認証保育所等の質を上げる、維持する努力と 平行して、認可外保育園の認可化のための対応を行う。 ・認可外保育園に関しての管理は都道府県にあるようですが、 それでは通り一遍のチェックしかできない恐れがある。市町村 にも一定の責任を持たせ、地域の子育て情報や子育て支援の取 り組みの蚊帳の外に置かれないような配慮が必要。 ・認可外施設に、いきなり厳しい条件を求めても「だったら やらない」といった結果になりかねないので(そうした場合、 困るのはそこの園に預けている親子なので)、いくつかの段 階を経て、最終的には理想の園に整備されていくという道筋 を示すのが実効的ではないか。 ・「多様なニーズに応える」というよりはむしろ「児童福祉 的な観点から」地域によっては、早朝・夜間保育を専門に扱う ような認可保育園を積極的に作っていく必要があるのではないか。 ・保育ママと認可保育所の間を補う、小規模型の保育施設の 設立が、多様な働き方の対応には向いていると思われる。 小規模型の保育について、新たなモデルをつくるなどして、 議論・研究を深め、一定の方針を定め、大企業というよりは むしろ地域密着型のコミュニティビジネスのようなかたちで、 参入者を増やしていく取り組みを行ってはどうか。 以上です。 よろしくお願いいたします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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