子どものことは子どもに聴く
こんにちは、杉山です。先日、知人の紹介で菅直人さんの奥様、伸子さんとお会いする機会がありました。当初お願いしたかったことは、お電話でアポイントをとったときに、「わたしそれには興味がないのよ」とあっさり却下され(笑)、「ならば!」ということで、戦略を練り直し、引っ越しもあるというのに、そっちの準備もそこそこに、企画書書きにあたふたしました。引っ越しの手伝いに来ていた母は、「奥さんに言ったところで仕方がない! ご本人に言いなさい」と、剛毅なことを言うし、ひとりが言って世の中変わるなら、政治などというややこしいプロセスは必要なくなるわけで(むしろ恐い話で)、あれが何だったのかと言われてしまえばそれまでなんだけど(年上のかっちょいい女性とお話させてもらったと、 そーゆーことなわけです)、でも、わたしにとっては、これからの大きなきっかけになったのは間違いないな・・・と、思う次第です。その時に、大いに参考にし、紹介した本がこれ。ヒア・バイ・ライト 萌文社 わたしの尊敬する名古屋のみなさんや以前杉山ゼミにも来て下さった吉岡さんたちがまとめられた本です。子どものことは子どもに聴く。こんな当たり前のことが、なぜか、できない。「あなたのためを思って」「大人の言うことを聞いていれば大丈夫よ」ちょっと先に生まれたというだけで、日本語が自分ら大人ほど巧みでないというだけで、「どうせ、わかってないだろう」と、ずいぶんと、僭越なことを彼らに言ったり、やったりしているようにも思います。(ちなみに「子ども手当」ですが、わたし「子ども」に支給 するもんだと思っています。「親」じゃなくて「子ども」。 ちゃんと子育てしてほしいから、カネを出す代わりに、 クチも出そうと思っています)かといって、言葉が巧みな、優等生の(大人好きしそうな)言葉を聞いて、「子どもの声を聞いた!」と自己満足するほど、わたしは単純でもないんです。(彼らが「大人なんて、ちょろいもんよぉ~」ってこっそり 舌出してるの、知ってる。ってそーゆー子どもでしたから)だから、この本は、そういう「子どもの声を聴く」の難しさも重々承知で、大人ってのは、つい、子どもを「弱者」にしておいて、「子どもたちのためにぃ~」としてしまいそうになることを慎重に、謙虚に取り除いて、「まあ、子どものことは子どもに聴いたほうが、わたしらが あれこれ口出し手出しするより、ましとちゃいますかね?」と、ちょっと控え目に、おずおずと、そおっと差し出された本、という感じなわけです。イギリスでは、ブレア政権になった時期から、「education,education,education」と強調され、国策として子どもの問題が取り上げられています。幸運なことに、ホームスタートジャパンの立ち上げに関わらせてもらったおかげで、イギリスが身近に感じられ、シュアスタートのことなども、若干なりとも知識があったのが幸いでした。そして、ヒアバイライトのプログラムの紹介だけでなく、後半では日本の課題について、汐見先生と若年層の労働問題にお詳しい宮本先生と、奥田さんたちの討論がまとめられています。ヨーロッパ人は、ギリシャ時代から、人間をふたつの側面からとらえてきました。ひとつは<人>としての側面で、食事をし、恋をし、子育てをする、<個人>としての営み。もうひとつは、<市民>としての側面で、共同体のなかで責任を持って発言をして、行動し、いかにその共同体をよくしていくかの能力が要求される。公共財=全体の利益のために、責任を持って考え、意見を持ち、行動する。このふたつをあわせ持ってこその「人間」。何のために公的に教育するのかというと、<人>としての豊かな生き方できるようにするためであり、<市民>としてどれだけの行動ができるかということを考えて育てるためなのです。汐見稔幸・白梅学園大学教授・学長『ヒア・バイ・ライトの理念と手法』よりここを、伸子さんにお話したんだと報告したら、編者でもある子まちネットのイトウさんが「ここにこだわったのだ」と教えてくれて、「ああ、本はこんなふうにして伝わっていくのだな」とつくづくと思いました。宮本さんがおっしゃっていた、・イギリスでは、「何をやったか」ということが重要なのではない。むしろ、「どんな成果が上がったか」「かかわった住民がどう変わったか」が重要(目的にそった評価。参加者の 人数やその場の感想のような評価では終わらない)。というのも、ほんと、そうで、「お願い~。早くそういう評価を日本でも導入してくれ~」と、お祈りしたくなってしまいます。日本のヒア・バイ・ライトのブログはhttp://blog.goo.ne.jp/hearbyrightです。 ・・・・・・・・・先日、NHKのこどもサポートネットで、海外の子どもの支援がいくつか紹介されていて、そこでも「ヒア・バイ・ライト」も紹介されていました。http://www.nhk.or.jp/heart-net/kodomo/大日向先生が「子どもの力を引き出す支援」ということをお話されているのが、印象的でした。EU各国にはそれぞれの歴史があり、失敗も多いだろうし、妄信するつもりもすべて素晴らしいというつもりもないのですが、いいものに変えていこうとする姿勢や合理的な判断、行動力、努力は、学ぶべきものがたくさんあると感じています。**ところで、わたしは、子育て中のお母さんを、「かわいそうな」「気の毒な」「支援しなくちゃいけない」人とは、まったく思っていません。対等な、年下の、大人の女性として、接しています。刺激し合いながら、大人同士のつきあいをしたい、向上したい。ともに良質な「市民」になりたいし、「人間」になりたい、と思っています。「ヒア・バイ・ライト」。この本は、ご縁があって、はるばるとわたしのところに届きました。そして、わたしから菅伸子さんに送りました。彼女は「息子は持ってるんじゃないかしら」とおっしゃってました。わたしの手に届けて下さった、たくさんの人に、ありがとう。