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カテゴリ:杉山千佳(子育て環境研究所)
杉山です。
子育て中のお母さんって、月にどれぐらい本を読む んだろうか?と、思ったりします。 子どもの活字離れが言われて久しくて、読書運動など もさかんなのだけど、家庭の中に本が当たり前になけ れば、子どもも本を読む子にはならないんじゃないか しらん・・・とか思ったりします。 生誕100周年ということで、やけに目につく太宰治です が、そりゃ、あんた、中学高校で読んでおくのが常識 でしょーみたいな感じです。 通過儀礼というか、すっかり参って「ヴィヨンの妻」に なりたいと、マジで思っていた女子高生は全集持ってた ものね・・・(自慢にもなりませんが)。 大人になって、太宰ゆかりの地にだいぶ近い土地に住む ようになりましたが、別に桜桃忌に行きたいとも思わな くなってます。 確かに、相当血肉にしましたし、今もなってますが、 わたしの周りで「恥の多い人生を送ってきました」 とか言ってる人がいたら、 「あー、はいはい。で?」みたいな女には、なってマス。 周囲がこう読むから、そう読まなきゃいけない というのではなく、本とのつきあいは、人間関係にも 似て、個人的なものだと思います。 で、今日紹介するのは、 『ムーミン谷のひみつ』冨原眞弓 ちくま文庫 子育て中の人に、ぜひ、読んでほしいなあと思った一冊 です。 ムーミンをはじめ、著者のトーベヤンソンの著作を何冊も 訳している著者が、わかりやすく「ムーミン」の魅力を 語るというもので、これを読むと、ムーミンの本を読みた いなあという気持ちに駆り立てられます。 ムーミン家族、ムーミン、ムーミンパパ、ムーミンママ、 ちびのミィ、スニフ・・というように、章立てされそれぞれ に、その魅力について語られています。 「かわいい子には旅をさせよう」のくだりなどは、 「あの子たちをしばらく家から離したらどうかな?」 というパパの提案に、じっくり考えてから、 「あなたたち、ちょっと旅に出たらどうかしら?」 とママが子どもたちに提案し、尻込みするムーミンに、 「これは、わたしたちにとっても大事なことだと 思うのよ」と、出発を促すママ。 「そうしたらママはもっと安心できるの?」 と尋ねるムーミンに、「そのとおりよ」と答えるママ。 ママたちが安心できるなら、僕やるよ! という気持にさせる、この絶妙の背中の押し方。 (「師匠」と呼ばせてくださいって感じ) ・・・・・ 理想のパパとママに見えるふたりなんだけど、内面には さまざまな葛藤を抱えており、ムーミンパパは、 「自分ひとりが手持ちぶさたで、取り残されていると感じ てしまう」こともあります。 ムーミンママと出会う前は、大海原を旅していた冒険家 なのだから、ムーミン谷の平和に「あ~っ」となって しまうこともあるのです。 ママはママで、好き勝手に生きるパパやムーミン、ミィ を思いながら、 「ママたちもおなじように、好きなときにぷいと出て いって、家の外で寝られないのは残念だわ。ほんとうは ママたちこそ、たまにはそういうことが必要なのにね。」 と、思っている。 どれかひとつの価値を押し付けるのではなく、 いろいろな個性あふれるキャラクターを登場させ、 彼らを物語の中でしっかりと生きさせることで、 物語は織りなされていく・・・というプロセスを まざまざと見せつけられる感じがします。 人は単純ではないのだ、という当たり前のことを、 ムーミンのお話から改めて気づくことができます。 子どもの頃は、こういう読み方はできなかったなー。 再び会えてよかった。 最後に、わたしの大好きな一節を紹介して しめとしたいと思います。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ニョロニョロに魅入られるようにして、ある日突 然家出をするムーミンパパ。 「しかしママはあわてない。パパの気持ちをあれこ れ詮索もしない。あえて説明しようともしない。あ れやこれやの説明というのは 「とまどったり悲しかったりするときに、自分を慰め ようとして、あとになってからみつけてくるもの」で、 じっさいのできごとにはあまり関係がないからだ」 「父親がぷいといなくなっても、だれも騒ぎたてたり しない。どうでもいいと考えているからではない。互い の意志や自由をたいせつにしているから、いらぬ手出し 口出しをしないだけだ。」 「家庭教育」とかなんとか、かんとか。 本当に子どもの心配しているのか、単なる 自己満足の「愛」を押し付けているだけなのか。 「わたしが、こんなに心配しているのにぃ~」 みたいな。 一貫して流れているのは、ここにもある「意志」 や「自由」の厳しさ、なのかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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