杉山です。
これを書いているのは7月3日で、明日、4日から
北海道の利尻・礼文・知床あたりに旅行に行く
予定のため、8日の分は先に書いて保存しておいて
います。

今回の旅は、生まれて初めての母との二人旅と
なります。
母は福井の農家の子で幼少期は裏の里山が遊び場
で、夏休みになると子どもたちだけで沼で泳いだ
（当時は水も澄んでいてとてもきれいだったらしい）
そうです。
越前海岸で行われた林間学校では、先生たちが児童
を沖まで連れて行って、「それ！陸まで泳げ！」と、
どぼんどぼんと突き落した（？）そうです。

そんな母なので、泳ぎが大好き。わたしが子どもの
ころ越前海岸に海水浴に行くと、あえて遊泳禁止の
岩場に行って、わたしたちをそこらに置いて、サザエ
とか素潜りで採ってきてました。

ともかく楽しみ方が、へたれのわたしたち都会っ
子（？）とは全然違う。
今回も北海道旅行が決まって、真っ先に言ったのが、
「熊よけの鈴が必要ね！」の一言です。
これは、わたしの回りでは相当うけていて（笑）、
いったいどこへ行く気だ！？ってゆーか、
北海道（特に今回行こうとしているエリア）はどこへ
行っても熊よけが必要なのか…行ってみないとわかり
ませんが、そういう母なのです。

その母よりももっともっとスケールをでかくしたの
が、たぶん河合雅雄さんなんだろうと。

今日紹介するのが、彼の著書
『森に還ろう　自然が子どもを強くする』
（福音館書店）です。





著者は、河合隼雄さんのお兄さん。ニホンザルなど霊
長類の研究家としても有名で、日本モンキーセンター
所長や故郷兵庫県の人と自然の博物館長などを歴任さ
れています。

ともかくびっくりするのは、文章が超お上手なこと。
河合家ってすごいです、ほんと。

野草（カタバミ）のことを書いた一節を引くと、

　葉を噛むと、酸っぱい。淡い少年の恋を思わす味だ。
葉をもんだ汁は、けがに効く。擦り傷常習犯には常備
薬だった。汁はシュウ酸を含むから、もんだ葉で金属
をこするとよく磨けた。子どものとき、お金を光らせて
遊んだものだ。

ここにはうそがない、体験が立ち上がってくるのです。
雅雄少年がしこしことカタバミでお金をこすって、きらん
と光ると、ニマーと満足げな様子が目に浮かぶのです。
幼少期の体験が太い太い根っこになって、その後の彼の
生き方を決めたことがとてもよくわかります。

そんなやんちゃな子どもがそのまま大人になり、アフリカ
でのサル研究に向かうわけですが、第2章のアフリカ奇行
では、回虫ロアロアとの格闘など、まさに「体を張って」
自然に飛び込んで研究していることがわかります。
心底、自然が好きなのね。いくつになっても自然に遊んで
もらっているのね…という様子がにじみ出てきます。

子どもの健全な発達と自然と人間の共生、この二つが
現代にとって、また明るい未来につなぐ重要な問題だと
して、日ごろの思いを書き記したものを集めたのが
本書である。

という一冊です。

自然が大事とか誰でも書けちゃうんだけど、やっぱりちょっ
と、薄っぺらいというか、アタマで空回りしちゃうと
いうか。

ただ幼少期の思い出に浸ってるわけでもない、その後
研究者になって、とことんサルを調査して、それを人間
の生き方にまでつなげていこうとされているわけだから、
説得力が違うなと、思います。
やっぱりやってきたことが文章をすっくと立たせる
なー。

この本と合わせて「少年動物記」を読むと、自然の
おもしろさ、深さがさらによくわかるとともに、
自然は、とことん付き合おうとする人をこんなふうに
育てるのだなあということがとてもよくわかると思います。

夏休みにぜひ、読んでみてください。