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カテゴリ:杉山千佳(子育て環境研究所)
杉山です。
景気の悪さみたいなものは、なんとなく感じざるを 得なかった北海道の旅ですが、いつもいつも「活気に あふれている」なんてのは、実はウソで、 「もしかして、暮らすってのはこういうものなのかも しれないなあ」 と、少し思ったりもしました。 礼文島、利尻島、知床半島にしても、まさに、今が かきいれ時で、一年を通して最も季節のよい、この時期 に、一年分の収入を稼いでしまおうということでもある んだそうです。 (韓国や中国などのお客さんがメインなんだそうですが、 今年は減少傾向のようです) ともかく、ゆっくり巡れたこともあり、急ぎの旅では なかなかみつけられない、その地域の横顔が見れたのは 収穫でした。 なかでも本当にびっくりしたのが、地域の文化度の高さです。 「なんなの?この博物館!?」と目を見張った博物館。 斜里町立知床博物館には学芸員が 3人いるのだそうです。 毎年特別展を開催し、きちんとした便覧資料を発行。 職員がクジラの解体もするようで、迫力が違う。 夜の動物探索教室を開催したり、けがしたオオワシの 保護をしたり、斜里町の歴史を紐解いて公開したり、 知床が世界遺産になるときには情報収集・提供の拠点に なったそうで、地域に根付いていて、粛々と、意味ある 仕事をする、 うまく言えないのですが、つまり、わたしはこーゆー感じ の仕事がしたいんだな・・・と思ったのでした。 北海道といえば、自然と海の幸。 観光客(&通りすがりのおいしいとこどりしたいメディア)は そんな「お約束」で動くわけですが、 そこで暮らす人たちは、その「お約束」を果たしつつ、 自分たちの暮らしも大事にしようとしているわけです。 「そこ」が、すごい。強いなあ。 (離婚率も全国一というし。我慢なんかしてられないのかも) つまり、それは「誇り」なのかもしれません。 (ちょっとびっくりしたのが、自民党のポスターの多さ。 人がまったくいない北のはずれでさえ、ピカピカの 武部さんと高橋北海道知事の並んだポスターが貼って あったものね。それと「大地」のポスターも) で、今日は旅先でみつけた、北海道を舞台とした絵本を2冊 紹介します。 一冊目が、礼文島を舞台にした絵本。 北の島だより 杣田美野里・中島祥子著 岩崎書店 東京在住のライター、写真家だったそまださんが、 礼文島に魅せられて一家で移住を決めたのが90年代 初めのこと。島で暮らしながら、子どもとその自然を 思いきり満喫してできた絵本がこれです。 春夏秋冬それぞれにこんなことして遊べるねといっ た暮らしの様子が丁寧に、楽しく描かれています。 写真とわかりやすいイラストで構成されているので 読んでいるこちらも楽しくなってしまう一冊です。 もう一冊は、知床で見つけた本。 漁師とヒグマ 寺沢孝毅 文・写真 福音館書店 福音館書店の月刊絵本は定評があり、ご存じ、 こどものともシリーズがおなじみなのですが、この 「たくさんのふしぎ」シリーズも、スゴイのです。 一流の作家が、子どもたちのために、知恵を振り絞ってすばら しい作品をつくろうとする、その誠実な仕事が福音館書店の 福音館たるゆえんなわけですが、 こ、この本が700円で買えちゃうの? というところも、うれしい。 カラフトマス漁の漁師と、ヒグマ。 その仕事ぶり、激しい自然、ヒグマのかっこよさが、 すばらしい写真で展開します。 いずれも「知床で生きる」、「ここでしか生きられない」 と決めたものたち。 漁師大瀬さんはヒグマとの「共存」の道を模索します。 大瀬さんは、魚をとる仕事が安全にできさえすれば、 ヒグマと関わりを持たず、距離をおいています。 「おれらは生活のために、ここで仕事をするし、クマも クマなりに食べ物を探して生きている。これからも いっしょに暮らせるんじゃないのかな。 どちらにとってもたいして邪魔にならないことだから・・・」 それが、自然のなかで自然の恵みをいただいて 生きるもののルール。 そのルールをわきまえるために、子どもは教育を受ける。 たとえば、上記の杣田さんの絵本を通して、 たとえば、知床博物館の展示や季節ごとの体験教室を通して。 洞爺湖でサミットが行われたこと、 アイヌの人権回復、先住民族として認められたこと等々、 先端いってる・・・と、理解した旅でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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