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カテゴリ:杉山千佳(子育て環境研究所)
こんにちは、杉山です。
実家の福井では、おいっこと遊んだり、11月に行われる わたしの講演会の打ち合わせをしたり、楽しく過ごすことが できました。 とりわけ、2つのお土産は、これからの日本の在り方とか わたしの生き方に、大きなヒントをもたらしてくれるもの でした。 ひとつめが、福井県知事が最近出された岩波新書。 「ふるさと」の発想 西川一誠著 岩波新書 とにかく読みやすい本なので、たくさんの人にぜひ読んで ほしいというのが、希望なのだけど、ことに政治とは 結局こういうことなんだよな、というのが、すごく腑に落 ちたし、そのなかでの国の役割や地方自治体の役割も、 「そうそう」とうなずくことが多かったです。 それは、この人が、単なる言うだけの人ではなく、 やる人、実践者であることが大きかったと思います。 著者西川さんは旧自治省の出身で、阪神淡路大震災の時、 国土庁の審議官として防災と復旧を担当された人でもあります。 その経験から、現場に行くというより、「現場にいる」 ことの大切さ、被災者に声をかけ「決して見捨てられてい ない、乗り越えよう」という気持ちを持ってもらうことの 大事さを知っています。 福井はこれまでも何度か水害に見舞われたり、越前沖で 原油が流出したりの被害を受けています。 そこでの全国各地からかけつけてくれる人たちのあたた かい思いも知っているし、自治体のやるべきことはなにか も、常に常に考え続けているのです。 目で見て、声を聞き、話しかけ、肌で感じた被災の現状。 これが災害対策の基本である。必要な対策は現場からしか 生まれない。 ふるさとの防災こそ自治体の仕事であって、降りかかった 面倒な仕事と考えてはならない。日常の仕事のようになす べきである。(同著より) 小泉改革がもたらしたものは何か。それは、国と地方の 信頼関係にほころびが生じたこと・・・というくだりは、 とても胸が痛みます。 この選挙でも「地方分権」が大きく取り上げられたけれど、 真の地方分権とは何か、なんのための地方分権なのか、 じっくりと考える必要があると思いました。 戦後高度経済成長の前までは、都市に人口が集中することは なかったのに、国策として太平洋ベルト地帯が生まれ、 人口が流入した(福井は流出)。人、モノ、カネが都市部に 流れる仕組みをつくったというくだりは、農山漁村の冨を 奪って、工業都市がうまれたのねーと、実感できました。 さらに、東京発信の情報が多く、地方が発信する情報が 少ないという情報格差のくだりは、そのとおりだけに、 どうしたものか・・・と、自分の課題として受け止め ました。 日々、「情報」を見ている者として、東京の情報がナンバー ワンとは、まったく思っていないので、地方発のすぐれた 情報が必要な人に正しく届けられていないのは、変だなあと。 でも、地方自治の間では、ご存じローカルマニフェストの 動きがだいぶ前から進んでおり、ネットを通して最新の事例 はまたたくまに関心のある地域に届き、やがて実践に移され るとありました。国はその追随。 で、知事さんが提唱しておられるのは、 「新しいふるさと」という考え方です。 何も生まれ故郷でなくてもいい、自分がこことつながりたい という地域を「新しいふるさと」を考えてはどうか?という ことです。 新しいふるさととは、自由な意思に基づいて、自らが 主体的につくり上げるつながりの一形態ということにある。 「新しいふるさと」には、過去からのふるさとという歴史の 積み重ねに加えて、自由な個人が「つくり上げる」という 新しい要素が加わっているのである。 じ~ん。わたしの生まれ育ったまち、ふるさと福井と、 その知事を、すごく誇りに思うのでした。 で、もうひとつのお土産は「新しいふるさと」づくりの 実践例。先日、朝日新聞のニッポン人脈記にも紹介されていた、 福井県池田町。 実家から車で1時間もかからない、小さな町で、こんな すばらしい取り組みが!? お米はここのブランド米を食べているんですが、発見でした。 農業を通して、地域の再生と持続可能な暮らしの在り方を 模索中のこの町。 全国各地から視察が相次ぎ、日本農村力デザイン研究所と いうNPO法人まで立ちあがっています。 http://plaza.rakuten.co.jp/nousonryoku/ そこで考える「農村力」とは、「人と社会を治癒する力」。 「人の力」「自然の力」「時間の力」「場の力」「技術の力」 「文化の力」「相互扶助の力」の総合体。 学びを通して「自分の根っこ」と「社会の根っこ」を取り戻し、 社会づくり、まちづくりの原動力となる人育てを目指しています。 たぶんね、人の力だけで、どうにかなるなんてことは そうそうなくて、自然や時間や場や技術や文化がお互い 生かし合おうという共通理解のうえで、力は発揮される ものだと思うよ。 そして、それは、簡単なことじゃない。 一時のノリでどうこうできるものじゃない。 政策を実行するためには、まず、住民が知り覚えられるよう、 できる限り紋切り型ではない、訴える力のある新しい言葉を 伴った政策が必要である。 また、政策を着実に進めそれを確認し、さらにレベルを あげていくためのシステムが欠かせない。 マニフェストは、住民にわかりやすい政策を自治体間競争を 地方自治の標準にしたという大きな功績がある。 次のステップは、日ごろは政治や政策に馴染みのない住民の 参加をどれだけ引き出すかであろう。 ポスト・マニフェストの課題であると考えている。 しばしば感じるのだが、政治家は誤解している。 今の時代、人びとは何かを自分たちのためにしてほしいという 期待だけがあるのではない。 それよりも、これまで政治から遠いところにいた自分たちの 話を、まず耳に入れてくれという思いが強いのだ。 これは陳情ではなく、政治や身の回りのことを喜んで話題に し、いま自分たちが地域でがんばっている様子を見てほしい、 知っておほしい、という気持ちが強いのだと思う。 (同著より) 大きな転換期になるかもしれないと言われている選挙だけれど、 結果がどうなろうが、わたしたちの暮らしはそんなに大きく 変わりはしない。 淡々と平凡な日常を繰り返すだけだ。 そのことを、きちんと理解し、自治体のあるべき姿、国の あるべき姿を考え、実践する姿に、わたしは信頼を寄せる。 きれいな言葉は聞き飽きた。 果たせない約束もいらない。 愚直な、誠実な、でも前向きな、 それでいて賢明な 確実な行為に、惚れるのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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