40年前の1972年9月29日、
「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」(日中共同声明)
に田中角栄、周恩来両首相が署名したことにより
日中国交正常化が実現しました。
本来ならこの40年の歩みを振り返り、
友好的な雰囲気のうちに各種式典が催されてしかるべきですが、
先日、中国側から一方的に、27日に予定されていた
式典の無期限延期を通告されましたね。
考えてみれば、日本側のほうが
今までにないレベルの領有権の侵害を受けているわけであり、
日本側から式典延期を申し出てもよかったわけですが、
中国側に先手を取られましたね。
日本が後手後手の対応に回っているのに対し、
中国は矢継ぎ早に攻勢をかけてきています。
日本は今回尖閣3島の国有化という駒をひとつ置いたわけですが、
それに対して中国が進めた駒は、つばめの思いつく限り
以下のようなものがあります。
1.10数隻に上る中国船の尖閣海域への領海侵害を公然と行う
(この状況は常態化させる意向)
2.天気予報に尖閣諸島を組み込み、国民の領土意識を高めるとともに
漁師たちの便宜を図る
3.中国領土である尖閣諸島の詳細地図の発行
4.尖閣諸島の島のうち、中国でまだ無名であった島々の命名
5.尖閣諸島が中国の領土であることを説明するパンフレットの発行
(中国語・日本語・英語)
6.尖閣諸島の領海基線を記した海図を国連に提出
7.中華人民共和国外交部は、排他的経済水域を
日中中間線を越え沖縄トラフまでとする大陸棚自然延長の案を
「国連大陸棚限界委員会」に正式に提出すると発表
などです。
今回の尖閣国有化のメリットが一体どこにあったのか、
つばめにはよく分かりませんが、
それによって受けた日本の損失は
明らかにメリットを大きく超えていると感じます。
尖閣国有化により、日中関係を悪化させ、
尖閣問題において中国これだけ一気に歩を進めさせる契機を与え、
日本の国益を大きく損なったことについて、
関連政治家は責任を問われるべきだと思いますが、
日本の雰囲気は、一部に国有化は失策だったという声はあるにせよ、おおかたは
「中国側の抗議に折れずによく筋を通した!よくやった」
という感じで、その行動で日本がどれだけ損したかという点には
焦点があたっていない気がします。
日本が得たメリットは、「尖閣は日本領土だという筋を通した。
あー、すっきりした」という気持ちだけではないでしょうか。
今回日本は、日中国交正常化交渉において
尖閣諸島問題は棚上げにするという暗黙の合意があったにもかかわらず、
(日本は合意はなく、相手が一方的にしゃべっただけと主張していますが、
合意を裏づける資料があるという日本の学者が現れましたね。)
それを破ったと日本を責める切り札を中国に与えたことになりますから、
(実際合意があったかどうかよりも、中国の尖閣をめぐる諸行動を
正当化する理由づけを与えたことが問題)
その損失は上記に挙げたものばかりにとどまらず、
長期的に負の影響を与え続けると思います。
中国は、頻度は増していたにせよ、
船一艘を時々尖閣に差し向けるぐらいしかできなかったのが、
今後は遠慮なく堂々と日本の尖閣領有権を侵害する行動を
起こしてくるのではないでしょうか。
日本人の多くは、今回の国有化が招いた事態の深刻さを
よく認識していないような気がします。
「日本の尖閣国有化になぜ中国がこれほど騒ぐのかわからない。
所有権が移転しただけでしょ?
国有化によって何かが変わるわけではないということを
中国によく説明すべき」
などという意見もありますが、日本の尖閣国有化が中国で
大きく問題視されるのは、それが、日中国交正常化交渉において、
尖閣諸島の問題は棚上げにする、という了解があったにもかかわらず、
日本が尖閣の現状に新たな手を加えることで、
その了解を日本が一方的に破ったということになるからです。
日本の尖閣国有化は、
日本の尖閣における実行支配を強める手段のひとつであるが、
実際的に何か大きな変化があるわけではないということは、
中国側は当然分かっているわけですが、
上記の理由で中国は今回の国有化を今までのいざこざとは
質が違うものとして大変問題視しているわけです。
また、中国は尖閣の領有権を主張しているのであり、その立場からすると、
日本の尖閣国有化は、自国の尖閣領有権に対する重大な侵害ということに
なるわけです。
「尖閣は中国の領土だ!日本の尖閣国有化は中国の領有権に対する
重大な侵害だ!」
と中国が叫ぶのはそのような理由からですが、
結局その目的は、日本の尖閣国有化を利用して
尖閣諸島における中国の立場を強めるためにほかなりません。
中国青年新聞の尖閣関連記事はすでに下火となり、
中国政府も、国慶節前までに今回の騒ぎは一応収める方向のようです。
ここ10日あまりの騒ぎの間に、中国側が目下打てる駒は
すでにほぼ打ち終わったわけですから、
これ以上騒ぎを続けても、中国にとって何のメリットもないからです。
今回の国有化の目的は、「平穏かつ安定的な維持管理」だったそうですが、
実際は平穏・安定どころか、全く逆の結果に陥っています。
これを国はどう見ているのでしょうか。
国は、東京都が都有化して色んな建築物を建てたりして
中国を刺激するのを防ぐために、しょうがなく国有化したんだ、
というような言い方もありますが、結局国有化を実行し、
その結果、このような尖閣のより不安定な状況を生み、
日本に大きなデメリットをもたらしたことには変わりありません。
だいたい、本当に都有化を止めるには国有化しかなかったのでしょうか。
もともと東京都が尖閣を買って国を守るなんていうのは明らかな越権行為であり、
都有化も国有化もしないという道だって当然あったはずです。
日本の政治家たちは、尖閣国有化がこのような結果を招くことが
予想できなかったのでしょうか。
国有化することで「平穏かつ安定的な維持管理」が実現できると
本気で信じていたのでしょうか。
もしそうだとしたら、そのあまりの外交センスの低さに
あきれざるをえません。
日本の国益を考えるよりも、
どうしたら自己と党にメリットがあるかばかりに
頭が行っている政治家が日本を動かす力を握っていることに、
「日本よ、大丈夫か」と心配せずにはいられないつばめです。