カテゴリ:日本語研究・日中対照研究
野田先生は、
「中国語と日本語では相手に対する配慮をどのように行うかなど、 コミュニケーションのしかたが違う」 ということについて、「コミュニケーションに関係がある文法」 「対話スタイル」「言語行動」に分けて 具体的な例を挙げて詳しくご説明くださり、 「そのような違いに対して日本語教育では どのように対処するのがよいか」 ということについて、 「語彙や文法だけでなく、 コミュニケーション教育も重視する必要がある」 と主張されました。 野田先生の北京大学でのご講演をきっかけに色々と考えをめぐらし、 言語によるコミュニケーションに関わる問題は 「文法(文を生成する際のルール)」に関するものと、 「文化(物の見方や感じ方、行動スタイルなど、 その言語集団に共通認識として存在するルール)」に関するものに 分けられ、この2つは問題の階層が違うのではないかということに 思い至りました。 (「階層が違う」というのは、大きく考えれば、 言葉(文法)も文化の一部に含まれるとも考えられるため。) 言語によるコミュニケーションに関わる問題: 1.【コミュニケーションに関係がある文化の未習得による問題】 ・・・対話スタイルや言語行動などを含む、 どんなことばを、いつ、どのように使うかという 日本語母語話者が共通して持っている言語コミュニケーションの ルールを習得していないために発生する問題 2.【コミュニケーションに関係がある文法の未習得による問題】 ・・・コミュニケーションに関係する日本語文法を 習得していないがために発生する問題 ※2は1の様々な問題のうちの大きな部分を占めるひとつであると考えられる。 (「母語話者」とは、「その言語を第一言語とする者」という意味で 使っています。) (「コミュニケーション」というとアイコンタクトやボディタッチなども 入るかと思いますが、ここでは「言語による」コミュニケーションを 大前提として考えています。) (ここまで考えて、箕浦康子著『子供の異文化体験』で提起されている 「文化文法」という概念を思い出しました。 ご興味がある方は、ニーハオ中国』2016年10月16日の記事↓ https://plaza.rakuten.co.jp/yukic08/diary/201610160000/ にこの本の内容が紹介されていますのでご覧ください。) 最初は野田先生が「言語によるコミュニケーションの違い」として 提示された「対話スタイル」「言語行動」 「コミュニケーションに関係がある文法」の問題を 自分の中で勝手にこのように2つに分けて考えたのですが、 よく考えてみると、「コミュニケーションに関係がある文法」というのは どうなのか、言葉というものはそもそも 人と人とがコミュニケーションを行うための道具なのだから、 「コミュニケーションに関係がない文法」などというものはなく、 どの文法も間違えて使うと、多少の差はあれ コミュニケーションに影響すると考えれば、 全ての文法がコミュニケーションに関係があるといえるのではないか という気もしてきました。さきほどの2は、 2.「(感情交流に大きく影響する)文法の未習得による問題」 ・・・(感情交流に大きく影響する)文法を習得していないがために 発生する問題 ということなのではないかと自分の中で整理し直しましたが、 野田先生はどのようにお考えになるでしょうか。 ※つばめは全ての文法が多少の差はあれ、間違えて使うと 感情交流に影響するのではないかという考えから、 (感情交流に大きく影響する)は あえてなくても良いのではないかと考えています。 つまり2は、シンプルに「文法の未習得による問題」 ということではないかと自分の中で整理しています。 「文法の未習得」がコミュニケーションに問題をきたす 要因のひとつだと考えます。 「言語によるコミュニケーションの違い」というと、 二つの言語を比較対照することで見えてくる違いということになると 思いますが、究極的には、「日本語のコミュニケーションのルール」、 あるいは「日本語の文法」を発見するために、 他言語と比較対照するという方法を取るのかな、 という感想を持ちました。 「日本語母語話者の言語コミュニケーションのルール」「日本語の文法」 ともに、ある特定の言語を母語とする日本語学習者に向けたものでなく、 全ての学習者に教えていけるルールであるはずだと考えます。 (もちろん、学習者の母語や文化背景によって、 習得のしやすさに違いが出るだろうとは思われますが。) ご講演を拝聴して、コミュニケーションと日本語教育について、 様々なことを考えさせていただきました。 私も現場で教えながら、 「どんなことばを、いつ、どのように使うかという 日本語母語話者に内在する言語コミュニケーションルール」 を発見し、それを学習者に伝えていきたいという、 新たな視点を持つことができました。 今回は隠れて講演会場に忍び込みましたので(笑)、 野田先生とお話ししに行く勇気もありませんでしたが、 またお話しできる機会があることを一方的に願っているつばめです。 P.S. 先生がご講演で「コミュニケーションを重視する教科書の例」として 紹介された「跨文化交际日语会话(解析与答案)」という教科書に 興味を持ち、すぐに購入してみたところ、 副主編がなんと知り合いのW先生でした。 Wさんは数年前に広州から北京に引っ越してこられ、 ご主人が中国人というつながりで知り合いだったのですが、 本をお書きになっていることは知らなかったので、びっくりしました。 人のつながりや縁ってほんとに不思議ですね。 跨文化交〓日〓会〓 解析与答案 posted by (C)つばめ 跨文化交?日?会? posted by (C)つばめ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021/03/08 10:20:08 AM
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