映画「In the Matter of Cha Jung Hee」鑑賞
今日は韓国のドキュメンタリー映画を見てきました。多分日本で放映されるか分からないので、筋書きを書くと、朝鮮戦争後、貧しかった頃韓国は孤児を海外へ養子に出していた。で、とある女の子がアメリカに送られる予定だったのだが、親と称する人がいきなり孤児院からその子を連れ出して、以後音信不通になった。当時、フォスター援助計画というのが韓国に支援をしていたようだが、その援助もこの先先細りするのは分かっていたし、養子にもらってくれるというのなら、その子に似た子を送ろうということになり、別の女の子が当初渡米予定の女の子の名前、Cha Jung Heeと偽って、アメリカに渡った。アメリカの親にはかわいがられたが、いつも心のどこかで実は他人の人生を奪ったのではないか?という罪悪感に囚われ、Cha Jung Heeを探しに韓国にやってきた。まずは、孤児院に行ってみた。そこで、すり替えの原因を突き止めたはいいが、孤児院から姿を消したCha Jung Heeの消息はそこになかった。次に、電話帳にあるCha Jung Heeという名前の人全員に電話をかけてみた。それでも、何人かのCha Jung Heeには会えたけど、これという人はいなかった。さらに、マスコミにも出た。新聞社に話を書いてもらったり、テレビに出演して、Cha Jung Heeに会いたいと訴えた。けど、出てこなかった。で、地元警察に行って、生き別れの家族担当?の部署があって、らしき人を見つけ出してくれた。で、ようやくCha Jung Hee本人であろう人に会えた。その人は、元々親がいたのに、迷子になってしまって、いつの間にか孤児院に入れられて数ヶ月たった。親は半狂乱で捜したんだろうけど、アメリカに行く前にようやく探し当てて取り戻した、らしい。で、本物のCha Jung Heeと会って、他人の人生を取ったなんて考えなくていい、自分は十分幸せである、という言葉を受けて、実は他人の人生を取ったのではなくて、それが自分の人生だったんだ、と自覚して、満足してアメリカに帰る、という話。ずいぶんと、変わった話である。この話、実話で、この映画を作った人が、すり替えでアメリカに行った女性である。まあ、それでもジャンル的に言えば、自分探しの旅、といえるんだろうか。自分のアイデンティティーを、人は求めてやまないものなんですね。けど、孤児、養子という半分くらいタブーな話を切り口に韓国を見てみるのも、興味深い。通常、こういう話、できれば隠していたい話じゃないですか。なのに、メディアに自ら出るなど、進んでカミングアウトしている。そういうところは、非常にアメリカンな考え方であるが。そういう点では少なからず物足りないのだけれど、未だに韓国はどんどん養子を海外に出しているとのこと。シングルマザーが社会に未だに受け入れられていないため、自分で育てられず、孤児院に送ってしまうのだそうだ。また、孤児院で働いている人や渡米にかかわった人たちは、自分たちは何も悪いことをしていないぞ、という警戒をしつつも、いろいろ骨を折って探す手伝いをしてくれていた。わざわざ自分でカミングアウトしないけど、このテーマでカミングアウトした人には、多少の戸惑いはあるんだろうけど、案外素直に受け入れてくれていたように思える。但し、アメリカ人、というレッテルを貼られているんだろうけど。実際本人が英語しか話せないから、そういう認識が、外国人だから例外措置として受け入れやすくしているのかもしれない。これがもし、韓国内のどこか違う家に養子に出たのだとしたら、事情は違うんだろうけど。でも、最後に自分は自分、というのが悟ったところで終わったので、よかったね、という感じでした。