|
カテゴリ:小説
しん、と胸が冷たくなった。やはり勇作とレイは恋人同士だったのだ。こわばった表情を勇作に見られるのが癪で、意識して顔の筋肉をゆるめてみる。そのおかげかどうかは分からないが、そのままの静かな口調で勇作は話を続けた。
「それ以外にも、二つ理由があった。俺、玲と出会ってから彼女を抱いてる間にもお前のこと、考えちまうって言っただろ? お前を抱いてるつもりで、彼女を抱いてたって。だから考えたんだ。もしかして俺、ゲイなんじゃないかって。玲がきっかけで同性に興味が芽生えただけで、お前以外の男と付き合えたら、お前のこと諦めきれるんじゃないかって考えたんだ。それに逸樹はお前に似てるしな。実際、初めて逸樹と寝た時も、お前のことを思い浮かべてた。逸樹がリードしてくれたってこともあるけど、生まれて初めて同性相手とすんなりセックスできたのは、玲の存在があったからだ。お前のこと考えると、俺、すごく勃っちまうんだよ」 思わず勇作の絶倫ぶりを想起してしまい、頬が熱くなる。つい数時間前まで貫かれていた部分までもが熱を帯びてきた。 ふと、勇作の表情が曇った。もしかして自分の淫らさにあきれられたのかと思ったが、どうやら違ったようだった。 「そのうち、逸樹もそれに気づいたみたいでな。ある日、いつもみたいにじゃれついて来た時に急に訊ねて来たんだよ。本当は自分以外に好きな人間がいるだろ、って。あいつを傷つけたくなくて、返事をためらってたんだけど、追求されて言っちまった。ああそうだ、ってさ。正直に言った方があいつにとってはいいと思ったんだ。あいつ、妙に勘が鋭いから嘘を言っても見破られるし、俺に愛想尽かして別れても、すぐに次の相手は見つかるからな」 「それで、レイさんはどうしたんですか?」 「拍子抜けするほどおとなしく、うなずいたよ。そうなんだ、ってつぶやいて。それでもいいってさ。その時はそれ以上、この話は出なかったんだけど、後日、自分からお前のことを切り出してきた。俺が好きなのは、玲――お前なんだろうって。偶然、二人で街を歩いてる時、お前とすれ違ったんだよ」 「覚えてますよ。レイさんにこう言われました。こんな奴、勇作にふさわしくないよって」「許してやってくれよ。あいつはあいつなりに辛かったんだからよ。まあ、一番悪いのは俺なんだが……」 「別に怒ってなんかいませんよ」 そう口に出した後、自分の声が尖っているのに気づいた。 つづく ポチっと押していただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年05月27日 23時02分23秒
コメント(0) | コメントを書く
[小説] カテゴリの最新記事
|