絶望したっ! 山下達郎の音楽コラム(雑誌CUT連載)
山下達郎 サンデー・ソングブック 山下達郎の音楽コラム(雑誌CUT連載)山下達郎氏は過去(1990年から1998年まで)、ロッキング・オン社の発行している映画系インタビュー雑誌CUTで音楽コラムを連載していました。落語好きとしても知られる氏の巧みな話術と面白い話の中身は、サンデー・ソングブックにおいて全く音楽を聴かない人さえも定期リスナーにしてしまうほど。単なる音楽家に止まらずマニアックな音楽愛好家、つわものレコード・コレクターとしても知られる氏のコラムですから、面白くないハズがありません。既に連載が終了して10年が経過していて、ごく最近これらを読み返して思うことは、「サンデー・ソングブック」と違って辛辣な意見が多いな、ということ。さすが音楽批評誌であるロッキング・オンの流れを汲む雑誌で連載されていただけのことはあるな、と思わせる質の高い批評文が多く見受けられるのです。例えば、連載第4回目の「きちんと紹介されることの少ない音楽ヴィデオ私評。」から一部を引用すると。「映画・演劇の批評にかけてはやたらと重箱の女性誌や情報誌も、レコードやミュージック・ヴィデオの紹介となると(特に私が買うような種類は特に)、何故か一転して妙にヨイショじみた感じばかりなのは、果たして無知無関心の故か、はたまた発売元の圧力か、さては内容についての情報を小出しにして無駄な買い物をさせ、その分売り上げを稼ごうという魂胆かなどと、つまらぬ深読みをしてしまう。」といった感じ。まるで「絶望したっ!」の決め台詞で有名な「さよなら絶望先生」かのような皮肉と深い洞察とユーモアの入り混じった味わい深い文であります。ともすれば音楽家である自分に撥ね返りかねない、敵を作りかねないような客観的・中立的で辛辣な意見は実に好感が持てますね。もちろんそういう話ばかりでなく思わず笑ってしまうような面白い話が多いのですけどね。残念ながら未だ単行本化はされておらず、このことは連載の最終回でも触れられていて、「雑誌メディアらしく記憶の彼方へ去っていくのがふさわしいのではと思っています。」とのこと。うーん、残念。どなたか氏に単行本化を働きかけてくれないかしらん。全ての連載のタイトル一覧はTATSURO YAMASHITA DISCOGRAFY SITEの「CUT COLUMNS」のページで見れます。全部で49回に渡っての連載ということになりますね。因みに個人的には「3,5,6,7,8,10,12,13,14,18,19,20,21,22,23,56,66」の各号のものが未読で抜けとなっているのですが、どなたか読ませて頂ける方がいらっしゃいましたら、どうかご連絡下さい。