「人の厚み」
GW遠征記第2弾は、岐阜。大阪での演奏の翌日、 恒例となっている祖父母の田植えの手伝いのため、再び高速に乗った。 祖父母は、84才。今も岐阜の田舎に2人で暮らす。そして、お米を作っている。昔より田んぼの面積は小さくしたものの、 自分のうちのお米だけではなく、農協にも卸している立派な米農家。 しっかり者のおばあちゃんと、陽気かつ努力家のおじいちゃん。このコンビネーションが、ホントに素晴らしい。理想の夫婦。そして何度聞いても飽きない、おじいちゃんの米うんちく、米作りへのプライド。もう60年もやってきた・・・と、おじいちゃんは言う。最初は誰も教えてくれる人がいなかった。でも、自分で失敗や成功を繰り返し、ここまで来た。今では、周りの同業者から教えを請われるほどになった、とおじいちゃんのことを得意げに話すのは、おばあちゃん。「おじいさんの田んぼを、人がお手本に見に来るでねぇ」そして、人が見るから、手を抜けないのだという。穂がばらつかず、均等な高さに育つように、重く垂れるように。ただ量を収穫することだけでなく、見た目の美しさにまでこだわりをもって、育てている。 プロの仕事は、こういうところに潜んでいる。一つの道を究めること。誰のためでもなく、自分のこだわりのために。 忘れたくない、と思う。祖父母のお米で私が育ったこと。私の体は、祖父母のDNAだけでなく、彼らのお米でも作られていること。そして、祖父母がプロだったこと。その血を、自分が引くこと。