長女のSOS
今日は日勤だった。日勤の時は子どもたちを送り出しに実家の母が朝来てくれていたが、今日から来られないので子どもたちだけで学校へ行くように言って、私は仕事に行った。次女の幼稚園は同じ幼稚園に通う近所の方に預け、幼稚園バスに乗せてもらうように頼んだ。母が朝来ない以外は、いつもの朝の風景だった。10時40分頃職場に長女の学校の先生から、電話があった。「長女さんが学校へ来ていないんです。」私はびっくりした。先生が家に電話しても誰も出ないと言われる。いろんなことが頭をよぎった。「とりあえず家に帰りますから、解り次第先生に連絡します。」私はそう言って電話を切り、上司に相談した。「長女が学校へ来てないと担任の先生から電話があり、すみませんが1、2時間ばかり家に帰って来てもいいでしょうか?」上司は「すぐ帰りなさい。帰ったら、どうだったか報告するように。」と言った。最近の上司は私に優しい。なぜか解らないけど、今はありがたい。私は帰りを急いだ。気持ちは混乱していたが、運転にだけは気をつけた。きっと、家で寝ているのだろう。でも、もしも事件に巻き込まれていたら・・・。いろんなことが頭の中でくるくる回った。家の近くで担任の先生の車とすれ違った。「今家へ行ったんですが、玄関に鍵がかかっていました。でも、2階に電気がついていたから、たぶんいるんじゃないかと思うんですが・・。」と先生。「解りました。とにかく家に帰ってご報告します。」そう言って家へ急いだ。家に帰って玄関をあけると、そこには長女の靴があった。私は一安心した。長女の名を呼びながら、2階へ上がった。長女は涙をためて、「朝、頭が痛くて、ゲボが出たから寝ていた。」と言った。「いつから痛かったの?お母さんが学校へ行くまではどうもなかったじゃない。」「お母さんが学校へ行ってから、痛くなった。」「そう、解った。でも、学校から電話があってお母さんはものすごく心配したよ。誰かにどこかへ連れて行かれたのかと思った。先生も心配して来てくれたんよ。」と言った。学校へ連絡した。先生はいるのが確認出来てよかったと言われた。「とりあえずは、本人も頭が痛いと言っているので、今日は休ませます。いろいろとご迷惑かけてすみません。」と言った。娘の熱を測ってみると、36,7℃。顔色も悪そうではない。「学校で何かあった?」「何もない。」「そう。じゃあパジャマに着替えて寝てなさい。」と言った。職場に娘がいたことを電話で報告した。「娘を寝せたので、今からすぐに職場に戻ります。」と言うと、「もう来なくていい。娘さんのそばにいてあげて。」と言われた。お礼を言って電話を切った。たぶん、娘は学校で何かあったと思う。嫌なことがあると口に出さず、それがどうにもならなくなるといろんな症状が体に出てくる。長女はそんなタイプだ。6年生。思春期突入時期。体も急激に大人になり、気持ちも複雑な年頃である。私のときはまだ単純に遊ぶことばかり考えていたが、長女の時代はそうもいかないようだ。一見いじめとは思われないようないじめ。そういういじめをする子は、先生受けがいい。そういう子だけでグループになっていて、その中の1人の子が嫌いな子をみんなで陰湿にいじめる。先生はいじめはないというが、長女は今までにずい分こうして心を傷つけられている。反論しないし言いつけないから、どんどんひどくなる。今回も何かあったに違いないが、今は聞かないことにしよう。きっと、今は言わないと思うから。ただ、娘には「学校を無断で休むと、みんなが心配するんよ。学校の先生も心配して家に来てくださったし、ものすごく迷惑かけたんよ。きっと、ほかの先生方も心配されていたと思う。お母さんも心配で、長女に何かがあったらどうしようと思ったんよ。ほんと、心臓がどうにかなるくらい心配したんよ。職場の人も心配してくれたんよ。いい、自分が勝手に休むとどれだけの人が心配してくれているかってこと、解っておいてほしい。みんな長女のことを想っているんよ。」長女は目に涙をためて、うなずいた。これは、たぶん長女のSOS。ここ最近、いろんなことが起こって、子ども達どころではなかった。1ヶ月前に、母からどうも長女が学校へ行きたくない様子だと聞いていたことを思い出した。全然子どものことをみていてやれていなかった。大反省である。私は急激に疲れた。張り詰めた神経が急に緩んだためか、激しい頭痛に襲われた。鎮痛剤を飲み、少し横になった。そして、2時間くらい眠った。目が覚めても気分は優れない。そのとき2階からピアノの音が聞こえた。長女の想い。複雑で、私のはかり知れないことを悩んでいるかもしれない。でも、解ってほしい。いつもお母さんは、あなたのこと想ってるし、愛している。そして一番大事ってことを。私は長女のところへ行って、思いっきり抱きしめた。長女は何も言わず、照れていた。