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analog純文

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2018.08.18
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  『平田オリザ戯曲集2転校生』平田オリザ(晩聲社)

 前回の続きです。
 上記の戯曲を私はそれなりに楽しく読みはしたのですが、「納得」という感じまでには至りませんでした。もっとも現代演劇は、戯曲を読んだだけでは全く分からないというのは常識でありますが、ともあれ私は、平田氏の演劇関係の本をさらに2冊読んでみました。この2冊です。

 『演劇入門』(講談社新書)・『演技と演出』(講談社新書)

 この2冊も面白かったですねー。筆者が自らの方法論について見事に理論化していることが分かります。きっととても頭の言い方なんだろうなと思いました。

 様々なことが書かれてありましたが、前回の報告で私が取り上げた平田戯曲の2つの特徴について、それに少し絞って紹介したいと思います。
 前回私が指摘した平田戯曲の2つの特徴はこれでした。

  1、セリフは観客に向かってしゃべられるわけではないということ。
  2、少なくないセリフは同時に複数発声されるということ。

 この2点は、物珍しさからは面白くも思いますが、しかし、ずっとこれだと、ストーリーが分からなくなってきませんか。ストーリーが分からないということは、テーマも分からないということになりませんかね。

 上記の2冊には、この疑問についての作者のユニークな認識が書かれてあります。
 まず、ストーリーが分からないことについてはこんなエピソードがありました。

 女子大生が、昔家庭教師をしてもらっていて、恋愛関係にもあった男と再会するシーンがあります。そこで、次のような会話が行われます。
  女・あのあと(別れたあと)ね、子ども出来たんですよ
  男・え?
  女・赤ちゃん
  男・……
  女・うっそー、
  男・……
 私の演出では、ここでは女子大生のほうは後ろを向いていて、どんな表情でこの台詞を言っているのかさえ分かりません。ここで私が、俳優に要請したのは、「観客の半分は、この女性が本当に妊娠したのだけれど、わざと『うっそー』と言ったと思い、観客の半分は、妊娠はしていない、ただの嘘だと思うように演技してくれ」というものでした。ここには、演出家としての私の「解釈」はありません。

 どうでしょうか。読んでいるだけでスリリングな舞台演出だと思いますね。
 しかし、……しかし、こんな演出の結果、テーマはどうなってしまうのかについては、筆者はこの2冊の本の中のいろんな部分で触れています。

 「伝えたいことなど何もない。でも表現したいことは山ほどあるのだ」

 世界を、ありのままに記述したい。私の欲求は、そこにあり、それ以外にない。

 私は、何かのメッセージや道徳観を観客に伝えるために、演劇を作っているわけではありません。私は、カクテルパーティーのようなカオス状態を舞台上に提示して、観客に、その世界を様々に感じ取ってほしいのです。

 あるテーブルに数名の人間が座っているとします。その中の誰か一人に、観客をうまく感情移入させるのが、近代演劇の演出法です。(中略)私は、観客が、そのテーブルに座っている、もう一人の人間のように演出をしたいといつも思っています。 

 もしも様々な芸術活動が、新しい世界解釈を作り出すことを最終の目的とするならば、こういったポリシーで作られた演劇活動が、それにふさわしくないはずはないと思います。

 さて、一番最初の報告であった筆者の戯曲についてですが、演出家の意図をとても納得した私ではありますが、もちろん戯曲については、予想通りの数多くの限界を持った読後感でありました。
 これは当然のことで、後は『転校生』という演劇の場に、私が直接参加するしかないのであります。


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Last updated  2018.08.18 08:00:14
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