追いかけてくる小さな影。
もうやめてくれ、
つかまってしまったら、手放せない。
「・・・ユーちゃん、待ってよぉ。」
雨もふってきてるっていうのに、
ついてくるのをやめてくれない。
「帰れってば、風邪ひくだろ!」
ふりきるように早足で歩く。
バタンとこける音がして、ふりかえるとシノが転んでた。
座り込んだまま、ベソをかいている。
膝から血が出てるし、どんどん雨がふりつけていた。
「・・あーあー。」
仕方なく近寄っていって、傷をみてやろうとかがむと、
「おいてかないでよ・・。」
必死で抱きつかれて動けなくなる。
だから言っているのに。
俺にかかわるんじゃないと。
彼がどんなに幼くても、
触れてしまったら想いを押さえることなんて出来ない。
「しらないからな、どうなったって。」
とりあえずはやく屋根のあるところに連れて行かなきゃ、
でも、そんなことしたら
次はどんな展開になってしまうのか。
「だって・・一緒に・・・いたいんだもん。」
怪我が痛くて泣いているのか、
シノの涙は雨にも勝つ勢いで流れていた。
「大変なことになるんだからな。
おばさんにも怒られるし、きっとみんなから白い目で見られる。」
自分の上着を脱いで、濡れないように彼の頭からかけた。
「そんなのどうでもいいよ。」
俺に抱きしめられて安心した顔をしている。
「ユーちゃんのことが一番好きだもん・・。」
なんの邪念もはいらない純粋な心で想われることは、
汚れてしまっている大人の俺には、少し落ち着かなかった。