「はじめから思ってたけど、やっぱりお前は変態だ。」
小柄で今、そっぽむいたのがリュウ。
「俺だって、お前がこんなにわがままだとは思わなかったぞ。」
そして、長身でリュウを覗き込んだのはタカ。
ここはタカがリュウに買いあたえているマンションで、
もちろん二人きりだった。
「俺のどこがわがままなんだ?」
「養われてるくせに、主人のいうことも聞けない。」
「主人って・・。」
「そうだろ?」
「そうだけど・・。」
タカの手がリュウの肩にからみついている。
「・・・でも嫌だからな、あの時の声録音するなんて。」
「じゃあ、写真のがいいのか?」
「お前は・・!」
タカはリュウの手をつかむと、
「どっちにしても逃げられないんだから、あきらめろよ。」
力づくでリュウをベットに組み敷いた。
口答えされる前に素早く唇をふさいでしまう。
タカの腕の中ではリュウはもがいていた。
「サービスするから・・な?」
「お前がサービスしても、俺は痛いだけなんだよ。」
苦い顔をしながらもリュウはそのまま瞳を閉じた。
「諦めが悪いな。」
どんなにうながしても、
リュウは自分の下唇を噛んで、声が漏れるのを我慢している。
苦しそうな息遣い。
早くなにか言わないかと、
手を動かしながら、その唇を注目して見ていたタカは、
ふとリュウの顔全体を見てみると、
その目元には涙があふれていた。
「も・・やめ・・。」
幼さを残したままで、
うったえかけるようなその顔は、やけに心に響く。
リュウの視線から目をそらすと、
タカはもう一度キスをしてから、
「しょーがない、もう勘弁してやる。」
そう言って、なにもいおうとしないリュウの、
望むとおりのことをしてあげた。
「録音なんてできてなかっただろ?」
裸のままでベットの中。
リュウはタカの顔を不安げに眺めていた。
「・・・さぁ?」
タカは興味のなさそうな声を出して、
リュウの髪をいじっている。
「さぁってなんだよ。」
「聞いてないし、聞く気もない。」
「・・・そもそもなんで録音なんて・・。」
「お前の声が聞きたかったから。」
「・・・なにが?」
タカはそのまま寝返りをうち、リュウに背中を向けてしまう。
「なぁってば。」
リュウがタカの体を揺り動かすと、
「.俺の名前、呼んでほしかっただけ。」
ふてくされたようにタカは言った。
「はぁ?いつも呼んでんじゃん。」
「もっと、感情込めて。」
「・・・。」
言ってみようとしたリュウだったけど、
なんだか照れるのでやめてしまう。
横になったままのタカは、
座って自分をみおろしているリュウの頬に手をのばすと、
「まあいいか、また今度で・・。」
と言った。
「い、いいよまた今度なんて、今言うから、待て今・・。」
あせるリュウを見ながら、タカは微笑んでいる。
「もう録音なんてしないから。」
リュウはホッと胸をなでおろす。
そして、タカはそのリュウのことを愛しそうに見つめると
「お前がもっと感じやすくなったら、自然にいいだすだろ。」
つぶやいた。