なさけない話だけれど、震えるのが止まらない。
飲んだのは風邪薬なので、
風邪自体の症状は治っているように思うけれど、
おそらく多めに服用してしまったことと、
僕がどんな薬でもあいづらい体質だから、
少しでも力を入れるとその場所が無様なほどに震えてしまう。
「苦しいか?」
大きな体で僕を包んでくれている彼が、
心配して背中をさすってくれている。
「・・・大丈・・夫。」
せっかく、イマシガタ愛の告白を受けたばかりだっていうのに、
こんな状態では、その甘い感情に身をまかせることもできない。
だけど、好きだって言った。
彼が、僕のことを。
「どうした?」
軽く息をきらせながら見つめている僕に、
「水飲む?」
彼は言うと僕を体から離してベットに横たわらせた。
冷蔵庫まで行ってしまおうとする彼の手をとっさに掴んで、
男っぽい顔をさらに見つめる。
「・・誘ってるのか?」
僕が手を離さないので、つないだまま、
彼はそっと唇にキスをしてくれた。
「ここにいてほしいから。」
そばにいてくれないと、不安でつぶれそうなのだ。
意味もなくドキドキして、異様に震える体。
彼を引きとめようと力をこめている指先にももちろん、
わざとしているように、
かなり大袈裟な震えがきていた。
「・・・っ痛!」
そして、肩の内側の柔らかい部分に突然、
激しい痛みが走った。
ゆっくり時間をかけてひどくなるそれは、
“ツッ”ているのだとすぐにわかった。
「なんだ?」
尋ねる彼にも返事はできなくて、
ただ震えながら胸にしがみついて、
自然に治ってくれるのを待つしかない。
全身でガクガクしながら、
必死で深呼吸を繰り返す僕のことを、
彼は抱きしめながら、辛抱強く待っていてくれた。
「な、治ってきたから・・・。」
痛かった部分を押さえながら僕が言う。
「ここか?」
その部分の服をめくって、
彼はそこにもキスをしてくれた。
「力、抜いてろ。」
そういいながら、彼はさらに他の場所にも唇をすすめている。
たしかに力さえ抜いていれば、
震えはしないのだ。
でも、そんなことをされたら、
無防備に力を抜いていることなどできなかった。
「・・・出来ないよ。」
努力はしてみたけれど、ついにはあきらめ、
僕は彼に降参の言葉を発する。
「じゃあ、そのままで。」
かまわずに彼の手は僕を脱がせてさわり、
粘膜はいろいろな場所へと触れていた。
「恥ずかしい。」
抵抗したところで、同じように震えるだけだった。
「こんなことしてるほうが、時間が早いだろ?」
薬の効力がきれる時間がという意味だろうか。
彼は言いながら、僕を背中から抱いて、
震えをおさえこむようにして力をこめた。
「嘘。」
耳元に、普段はあまり聞かないようなトーンの、
彼の色っぽい、かすれたような声がする。
「そんな理由じゃ駄目だよな。」
彼の動きが止まっているので、
僕も震えないままで、たくましい腕に身をまかせていた。
口ではそういいながらも、また彼の手は動き出して、
僕の体は生まれたての動物みたいに、
また生理的な震えを思い出す。
「最低だって、嫌われそう。」
自嘲ぎみな彼の言葉を遠くに聞きながら、
それでもやっぱりそばにいてくれて幸せだと思っていた。
『毒』