"買い支える"ということ
書店でタイトルを見た瞬間「そうそう、その通り!」と思って、手に取った本が、こちら。日本の「食」は安すぎる 山本謙治・著 講談社+α新書著者は人気ブログやまけんの出張食い倒れ日記の方。昨年1年を表す言葉が『偽』であったように、賞味期限や産地の偽装など、食の安全性への関心が高まっている、昨今。今年も、年始から餃子事件、最近も事故米事件などで、「相変わらずの体質ではないか!」という報道がなされています。この件に関しては、つい先日まで、半分ぐらい食の業界に足を突っ込んでいた、私。裏事情もある程度知っているので、「問題を起こしたメーカーには大いに問題があるけど、消費者側にも問題あるんじゃないの?」と言ってましたが(ここ)、その辺の背景について、詳しく書かれている本です。この本の主張としては、タイトル通り。日本の安すぎる「食」が、偽装を生んでいるのではないか、という問いかけから始まります。食品の生産現場に入り込んでいる方だけに、”本物の食品”を作るのに、どれだけのコストがかかるのかを具体的に事例を挙げて解説しています。漬物や豆腐、納豆などの加工食品から、野菜、牛肉、豚肉、牛乳など。こうした食品について、誇りを持って作っている生産者・メーカーの方の取り組みを紹介。その一方で、特売にされているような大量生産品は、どうやって作るのかについても言及しています。高いものには、高いなりの理由が、安いものには、安いなりの理由があるという、当たり前のことを、改めて気づかせてくれる本だと思います。もちろん、著者の方は、いたずらに高い食品を勧めているわけではありません。それぞれの商品の値段の理由を知り、その上で選択の自由を行使するべきと述べています。この本で、提唱されているのが「買い控え」ではなく「買い支え」という考え方。自分が共感できる商品を”買う”というポジティブな行動で、生産者をバックアップしましょう、という考え方です。さて、ここから本題。私、日常の食品は多少怪しいところがありますが(ファーストフードも利用しますし)、お茶に関しては、結構、買い支えをしている方かなぁと思います。中国茶というのは、本当にピンキリの世界です。深い山の中で、大自然の恵みをめいっぱいに受けて育った、安全で素晴らしく美味しいお茶もあります。ええ、それは感動する美味しさです。しかし、あれだけ広くて、多くの人民を抱える中国。一部の心ない人による、危ないお茶があるのも、また事実。残留農薬の問題ぐらいなら、まだかわいい方。土壌が重金属に汚染されているような茶畑もありますし、有害な染料で着色されたお茶が中国国内の茶葉市場で出回ったりもしています。当然、こういう訳ありのお茶は、現地でも安い。というよりも、お茶のプロなら、まず掴みません。ところが、このような事情について、全く配慮も知識も無い日本の業者が、安いからと特売品として買い付けていないとは言い切れません。まあ、そういうお茶でも、正規の輸入・通関手続きをしていれば、検査で撥ねられるので良いのです。日本の検査基準は、結構厳格です。が、どんなに政府が厳しい基準を設けたとしても、手荷物(ハンドキャリー)で持ち込んだり、申告せずに日本国内に持ち込んだりしていたら・・・残念ながら、検査の網をすり抜けてしまいます。#一人一人の荷物をチェックしていたら、税関は長蛇の列で大変なことになります。現実的ではありません。そうして持ち込まれた粗悪な茶葉が特売品として日本のマーケットで販売されていたら・・・考えるだに恐ろしいことです。しかし、あり得ないとは言い切れません。こういう粗悪な茶葉、売れなければ、マーケットから淘汰されます。しかし、消費者が買うから、そういう茶葉を仕入れて儲けようという業者が出てくるのです。怪しい茶葉は買わない悪質業者の撲滅には、これしかありません。#見極めるのに手っ取り早い方法は、必要な情報がきちんと明記されているか?あるいはホームページなどで、情報開示がされているかを見ればいいわけです。そんなこともあって、私、日本国内で買うときは、しっかりとした知識・見識を持っており、素性のはっきりしたお茶を取り扱っている(と思われる)お茶屋さんのお茶しか、手を出さないようにしています。そうすることで自分の身を守るとともに、きちんとしたお茶を出す良心的な業者さんを応援したいのです。・・・ただ、残念なことに、良心的なお茶屋さんの全てが、必ずしも商売上手とは限りません。毎年、惜しまれながらも消えゆく中国茶専門店。本当に多いわけです。ここで、興味深いデータを1つ。総務省統計局が調べている、家計調査年報(平成19年度)によれば、2人以上の世帯が、茶類に年間使うお金は、一世帯平均13,203円(参考資料←注意:エクセルデータ)。そのうち、茶飲料(ペットボトル茶など)に5,802円振り向けていますから、茶葉代と思われるのは7,401円。そこから、さらに緑茶、紅茶、他の茶葉と分かれていまして、中国茶の可能性がありそうな”他の茶葉”の金額に至っては、一世帯平均で年間1,319円に過ぎません。ちなみに、コーヒー豆は年間4,818円、ビールは17,218円です。この数字を見るだけでも、中国茶が他の嗜好性飲料と比べて、いかにマイナーなマーケットか分かろうというものです((((((^^;(注)家計調査年報の数値は、必ずしも全体を表した数値ではありませんので、あくまで傾向値として比較して見るべきものということを付記しておきます。こういう小さなマーケットで頑張っている、中国茶専門店の方々。そりゃ、経営も大変です。でも、中国茶愛好家としては、美味しいお茶がいつも飲めるように、何とかしたい。発想を変えると、マーケットが小さいということは、買い支えの効果はてきめんに現れるとも言えます。現地で購入するのも楽しいし経済的で良いのですが、たまには日本の確かな中国茶屋さんもご利用いただきたい。末永く身近で中国茶を楽しめる環境を維持するためにも、私、そう思うのです。え、私の年間茶葉購入額?聞かないでください。。。