ふたりの約束。
この前 私は近所のおじいちゃん Y さんと日向ぼっこしながらベンチに座って話をした。おじいちゃんは80歳。温厚で、まるで夢の中に居るかのようにゆっくりと話す。「先日、僕より先に弟が亡くなっちゃったぁ‥。弟なのに、僕より先に‥。」 そう言って、おじいちゃんは悲しそうに宙を見つめた。「寂しいなあ‥。僕の周りの人たちはみんな僕より先に行っちゃうよ‥。 僕は一人になっちゃうのかな? 一人で死んで行くのかなぁ? 」 寂しそうに、宙を見つめたまま、おじいちゃんはつぶやいた‥。私もおじいちゃんの見つめる先と同じ方向を見つめながらこう言った。「Yさん、人間っていつかはみんな死んじゃうんですよね。 そしていつ死ぬかは誰にも分からない。 ひょっとしたらYさんより私の方が先かも知れない。」「そうだね~。どっちが先か分からないね~。」とおじいちゃんは答えた。「Yさん、もし私とYさんが同じ日に死んだら一緒に手をつないで天国に行きませんか?」 私はおじいちゃんにそう提案した。「えっ?僕と一緒に行ってくれるの?」おじいちゃんは嬉しそうに驚いた。「だって、私も一人じゃ寂しいです。もし一緒の日に死んだら、 ふたりで一緒に手をつないで行きましょう?そしたら私も嬉しいから。」 その日、私はおじいちゃんと約束をした。静かに、そして、夢見るように。