褒めつつ、舵をとる
新人の編集者も、入社して数年が経つと、自らが企画した本の原稿を著者から頂くという経験をすることになると思います。 これが特に編集者として初めての原稿ということであれば、それは本当に嬉しいものです。 編集者は著者の原稿の最初の読者であると同時に、その原稿に対して的確なコメントをする (評価をする) という大きな役割を担っています。 著者が書き上げた第1次原稿が当初の狙い通りになっていれば言うことなしなのですが、これがなかなかそういうわけにはいかないというのが実際のところです。 細かく挙げると切がないのですが、特に困るのは、企画したものとはちょっと方向性が違っているような ・・・ とか、この部分の話の展開はどうかなぁ ~ と感じたときですが、原稿全体の方向性がおかしいと感じたとしたら、それは編集者側にもかなりの責任があると思います。 やはりそうした事態になる前に (原稿催促のとき) 、著者がある程度書いた段階で (例えば、1章分ずつでも) 読ませて頂き、こまめにコメントをしたり打ち合わせをすることが必要だったと思うからです。 こうした作業の中で気になる点が出てきたとき、 私の場合は “著者を褒めつつ、舵をとる” という方針で行くようにしています。 例えば、話の方向性が違うなぁと感じたときには、まずはうまく書けているところを褒めて、その上で、「でも、先生、この部分はこういう感じの展開の方がより良くなると思うのですが、いかがでしょう?」 といった感じに意見をぶつけて、著者に 「なるほど、その方がいいね」 と感じてもらいつつ、少しずつ全体の舵をとるようにするなど。 編集者としてある程度経験を積んできた人には 「そんなの当り前でしょう」 と言われてしまうと思いますが、新人編集者にとっては、このやりとりがなかなかうまくできないものです。 私は新人時代、原稿に直球勝負でコメントしてしまい、著者を怒らせてしまったこともありました。 “編集者として著者に伝えるべきことはきちんと言う” ということはとても大切なことですが、その際に、 “褒めつつ、舵をとる” という姿勢でいくと、原稿の調整を始め、著者とのコミュニケーションでも結果としてうまくいくことが多いと思います。