いまさら知ったこと
長男は筋金入りの我の強さで小さい頃から私を振り回した。なんでも自分でやりたい。意に沿わないことはやらない。泣かない。謝らない。動かない。若かった私は、何もかもが許せなくて、この子を憎んでいるのではないかとさえ思った。幼稚園の頃だったか…。激昂した私が「家から出て行け。」と怒鳴ったら、リュックに着替えを詰めて、本当に出て行ってしまった。泣きもせず、気合を入れて歩く姿に、こちらが泣けたっけ。今では笑い話だけど。その後「出て行け」は「お母さんが出て行きます。」になった。でも。家出を終えて帰って来ると、家はもぬけの殻で、長男は友だちの家に遊びに行っているのだ。ばかばかしくて、また泣けた。今日。長男に、そんな話をしたら。「ワシね。一度だけお母さんの後を追ったことあるよ。途中で見失っちゃったけどさ。」そうなんだ…。知らなかったよ…。私はきっと振り向きもせず、自分の怒りに任せて、息子を置き去りにしたんだろう。それなのに、追いかけてくれたんだ。振り向いて、抱きしめてあげればよかった。はじめて。もう一度やり直したいと思った。