『般若心経』とは?
◆『般若心経』とは? 『般若心経』は正しくは『般若波羅蜜多心(プラジュニャーパーラミターフリダヤ)経』と言いますが、インドのサンスクリット語の原典にはタイトルはなく、中国で、結びの言葉に「経」を付加してタイトルにしたのです。 「般若波羅蜜多(プラジュニャーパーラミター)」は「智慧の完成」、「完全なる智慧」という意味です。「プラジュニャー(パンニャー)パーラミター」を「般若波羅蜜多」と音訳しているのは、これが固有名詞と考えるべき特別な智慧だからです。大乗仏教では修めるべき六つの修行・徳目を「六波羅蜜多」と言いますが、その中の最後の最も重要なものが「般若波羅蜜多」です。 「フリダヤ」は直訳すると「心臓」ですが、「真髄」や「真言」という意味で使われます。「真髄」という意味だと解釈する説と、「真言」という意味だと解釈する説がありますが、どちらだろうかと考える必要はありません。なぜなら、経典の中に「般若波羅蜜多は大いなる真言である」と書いてあり、『般若心経』の主張は「般若波羅蜜多の真髄は真言である」ということだからです。『般若心経』は「般若波羅蜜多」の修行方法を説いており、文章の流れからして、明らかに真言を伝授することを核心としています。実際、鳩摩羅什をはじめ多くの人が「真言」と解釈して訳しています。ちなみに「真言」という言葉で漢訳されていないのは、この時代には「マントラ」を「真言」と訳すことがまだ定まっていなかったからです。