初めての遠距離恋愛(終)
(1) , (2) , (3) の続きです。順調に進んでいたお付き合いも、いつの日か陰りを見せ始める。それは大学進学の話と共にじわじわと訪れた。アメリカの大学に進学することで、まず一度目の喧嘩があった。彼はやはり4年間も離れることが嫌だったようだ。私が勉強したい分野は日本よりもアメリカの方が盛んで、20年は進んでいた。だから私はどうしても本場で勉強したくて、彼を必死で説得した。何度も話し合った後、彼も納得してくれて、アメリカへ行くことは賛成し、その後は応援してくれていた。そして、彼と付き合い始めて1年が経った時、なんと彼から「COCOが大学を卒業したら結婚しよう」と言われた。突然のプロポーズ。正直戸惑った。彼のことは、「これ以上人を好きになることは一生ないだろう」と思うほど好きだったけれど、まだ18歳の私には、そんなことまでとても考えられなかった。でも彼にしてみたら、そのときはもう25歳、もうすぐ26歳になろうとしている。そして私が大学を卒業するときは30歳になっている。 考えて当然のこと。でも私にはその言葉がとても重荷に感じた。彼とずっと一緒にいたい気持ちは同じ。でも結婚なんて、まだまだ先の話で、大学に入る前から卒業後のことまで考えられなかった。「私には分からないよ。今約束はできないよ。」「どうして?僕はこのことで君を縛るつもりはない。大学だって応援するし、君をずっと待ってる。でも何か形にしておきたい。 COCOが好きだから」この言葉は、今でもはっきりと覚えている。その抑揚すらも耳に残っている。「でも、今Yesと言ったところで、何の形になるの?」「分からない。その返事を聞いたところで、4年の間に何が起こるかは分からないけれど、なぜか不安なんだ」彼と別れることなんて考えてもいなかったし、このままずっと続いて結婚できたらどんなに素敵だろうと思っていた。 それくらい本気で好きだった。でも、それとは別に自分の夢もしっかり追いかけたかった。「結婚」ということをまだ何も考えられないのに、ただ言葉だけでも「Yes」と言って、彼を安心させるべきだったのだろうか。そうすれば、二人の心に溝ができることなく、今でも一緒にいられたのだろうか。まだ18歳だった私にはそんなことを考える余裕すらなかった。だた、いい加減な気持ちで「Yes」とは言いたくなかった。 本当にただそれだけのこと。でも彼にはそれがかなりショックだったらしく、だんだん二人の心に隔たりができ始め、まるで目の前に無限に広がるガラスがあるかのように、彼の姿は見えても、向こう側に入る入口を見つけられずにいた。それでもお互いを好きだという気持ちはずっと続いていた。お互い心に小さな不安を抱きながら、特に何の進展もないまま、私はアメリカへ旅立った。その後暫くは電話で話したりもしていたが、やはり時間帯が違ったり、私は寮に入っていた為、なかなか連絡が上手くとれず、すれ違いが多くなっていた。そのことで、彼は私を責める。私も彼を責める。お互い好きなのに、気持ちは通じているのに、だからこそ、会えない寂しさに縛られる。ある日電話口で彼が言った。「COCO、君の事は今でも変わらずに好きだ。今すぐ結婚したいくらい好きだ。でもこの状態で僕はあと4年も待たなければならない。もしかしたらそれ以上の年月かもしれない。僕には無理だよ。 君のことが好きでたまらない。君のアメリカ行きがあと2ヶ月となった辺りから、別れた方がいいのかもしれないと考えていた。 それは、 君のいない日本で耐えられるだろうかという僕の弱さから来ることだ。でも君の声を聞くたび、会うたびにその気持ちは掻き消される。君が好きだから・・・ 今も同じだ。だから僕はもう電話をしないでおこうと思う。君の声を聞いたら、このままずるずるといってしまう。辛いけど、僕の我侭だけど、分かって欲しい。」私には彼の気持ちが分からなかった。好きなのにどうして??確かに電話ですれ違いもある。今までみたいに毎日はできない。月に2回も会えない。でも好きな気持ちは変わらないのに。。。「そんなの嫌・・・」それしか言えなかった。勝手なことをしているのは自分だと分かっていながら、そのまま彼と終わるなんて考えられなかった。彼は優しい人。 でも、決めたことは実行する強さも持った人だった。涙でそれ以上何も言うことができない私に、「僕はもう電話をしないけど、COCOは何かあったらいつでもしておいで。でもあまり頻繁にはするなよ、諦められなくなるから。」と優しく笑いながら言った。私は、彼の決心の強さを知り、泣きながら「分かった」とだけ言った。 それ以上何か言えるほど、私は強くなかった。”また私から電話をしてもいい” 私にはこの気持ち、彼には ”またCOCOから掛かってくるかもしれない” という気持ち。お互いに、まだどこかで繋がっているのだという気持ちを持つことで、その失意の中に小さな光を感じることができた。でもその反面、心のどこかで、 ”もう二度と話すことはないだろう” ということも分かっていた。事実、それ以降 彼と話すことは一度もなかった。私は彼のその後のことを何も知らない。Kさんに聞けばきっと教えてくれるけれど、あえて聞かなかった。これからも聞くつもりはない。素敵な人だった。私が一番胸をときめかせた人だった。だから、きっと幸せな人生を歩んでいると思う。私の初めての遠距離恋愛は、こうやって幕を閉じた。終わり いつもありがとうございます♪人気blogランキングへ