『私がクマにキレた理由(わけ)』 (2007) / アメリカ
原題: THE NANNY DIARIES監督・脚本 : シャリ・スプリンガー・バーマン 、 ロバート・プルチーニ 出演 : スカーレット・ヨハンソン 、 ローラ・リニー 、 アリシア・キーズ 、 クリス・エヴァンス 、 ポール・ジアマッティ 公式サイトはこちら。<Story>無事に大学を卒業したものの、人生の方向性を決められない21歳のアニー(スカーレット・ヨハンソン)。就職活動も上手く行かず、公園で途方に暮れていた彼女は、1人の少年を事故から救う。少年の母親ミセスX(ローラ・リニー)に名前を聞かれ「アニー」と答えたところ、彼女は「ナニー(子守り兼教育係)」とカン違い。こうしてひょんなことからX家の“ナニー”となったアニーは、5歳の息子グレイヤーに振り回されながら、アッパー・イーストの超高級アパートに暮らすX家の生活を観察し始める。私がクマにキレた理由(わけ) - goo 映画<感想>スカちゃんの秋の2本のうちの1本目です。可愛らしいというかコメディちっくな予告で、楽しみにしていました。それにしても、この邦題。そもそものテーマであるところの "nanny" が全く入ってないから、ベビーシッターとも違うことがわかりづらい。何で「クマにキレる」のかなんて、物語の最後にならないとわからない訳ですから、せめてもう少し気の利いた題はなかったものかなと思いました。NYで暮らすことはそれなりにステイタスではあるけれども、同時にそれを維持するためには相当なストレスがかかっているという話を聞いたことがあります。ここに出てくる、ローラ・リニー演じる子守の依頼主さんたちのものすごいこと・・・ 彼女たちは専業主婦なんでしょうか。 それにしても実にいろんな「会合」があり、それに参加することによって自分たちの社会的地位を誇示しようとするかのような姿勢は、「究極の専業主婦」になるための関門なんでしょうか。日本でもたぶん、セレブな主婦さんたちはそういうことしているんでしょうけど、その中にちらっちらっと垣間見える互いの家庭の中身、そしてそれを話題にされちゃうような世界は、見ていて実にいやらしいなと感じますね。で、彼女たちは何のためにnannyを雇うの?? って感じました。社会的活動は大事。でも家庭も大事。だけど面倒くさい子育てはイヤ。誰かにやってもらおうかしら。。。 でもそれには自分の指図を完璧に聞いてくれて実行してくれる人じゃないと困るし、大事な子供とも相性が良くないと困る。ただ仲がいいだけの相性じゃなくて、教育も授けてくれる人じゃないとね!・・・ って、どこにそんなことやってくれる人がいるのよー!! と言いたくもなりますよね(笑そんなにご注文が多いんならご自分ですればよいのにね~。母親なのに(苦笑そうして子どもに一心に注がれる愛情が多い分、自然と旦那さんがないがしろになることは間違いなく、不仲 → 離婚へまっしぐら。。。 という公式が成立していきます。実際にこういうご家庭があるからこそ、こういう話も出てくるのでしょう。「nannyとの関係を考える」みたいな講演会で顔を合わせた、nannyとその雇い主たちのご対面は、まるでアメリカ社会の経済格差を見せつけられるようでした。雇い主たちである専業主婦はほぼ100%WASPだったりセレブだったりするのに対して、雇われる側のnanny達の顔ぶれを見てみると、ヒスパニック系やアジア系の移民たちが多いんです。それだけ、nannyは必要とされてはいるけれど薄給だったり社会的地位が低かったりするわけです。だけどnannyだって人間なんだし、無理な注文ばかりさせられたらキレたくもなるわけで。(c)2007 The Weinstein Company, LLC. All rights reserved. それよりも何よりも気の毒なのは子供たちです。親に構ってもらえない寂しさからnannyに対して反抗したりいたずらしてみたり。迷惑被るのは周囲です。親の愛情を必要としている時に邪魔者扱いされてしまって、この寂しさの行く先をどこに持って行ったらいいんだろうね。。。 可哀そうに。 グレイヤーのふくれっ面を見ながらそんなこと考えました。育てないなら子どもなんて作らないでよ! って言いたくなるくらい、親たちは勝手でした。父親はビジネスと愛人三昧、そして母親は夫に構ってもらえない不満をたっぷりと溜めながらそのはけ口を求めるかのように社会的活動にのめり込んでいく。気がついた時は子どもがどういう状態になっているかなんてわかっていない。けど自分たちは中心になっちゃっているから、自分たちの方針が実に滑稽であることは絶対にわからない・・・ 見ている側としては面白すぎる設定ですね。ちょっと気になったのは物語の設定です。文化人類学を専攻したからと言っても、家庭の中に子守として入ることでその学問の足しになるとはあんまり思えないような・・・。児童学や社会学だったら参考にはなりそうですが。その視点で子守に入るのですから、長く真っ当に努めようとはさらさら思っていない。けどもうちょっと考えて他の仕事にするんじゃないのかなあ~ って私なら思う。そうすることでアニーが高いポジションに上って行ってしまったら、彼女はもしかしたら将来的にはnannyを雇う側になるのかもしれないですしね。・・・とまあ、そんな余計なことに思いを馳せつつも、自然体のスカちゃんの本音系の演技は久しぶりのような気がしましたので、その爽やかさにまたまた秋の2本目(→ これが大本命ですよねw)に期待を抱きつつ劇場を後にしたのでした。ここ数年は、役になりきらないといけない役が多かったような彼女でしたから、こういう、素に近い演技もたまにはいいものです。ラストに希望も持てましたし。あとは、アリシア・キーズですよね。。。 まさか映画に出るとは思わなくて、でもとっても素敵でしたし大人っぽい演技でした。願わくばサントラでも歌っていただきたかったけどね。********************************今日の評価 : ★★★☆