本当のヒーロー 本当のヒロイン
もう2ヶ月も前の話なんですが、読んでいる新聞の『作家の口福』というコラムに、印象的な文章があって、今も時々その内容を思い出しています。失礼ながら、知らない作家でした。高野和明という方です。「ジェノサイド」という作品があるようです。短い文章でしたが、おおよそこんな内容でした。父親に反対されながら、映画監督をめざし、監督にはなれなかったが脚本家でメシが食べられるようになり、しかし、それも先細りで。27歳のとき 100円にも困るような生活となり、父も亡くなり人生のどん底の実感があったとか。そんな食うにも困るような中、救世主となってくれたのが近所の定食屋さん。メニューは日替わり定食430円で、お店は食事時はいつも勤め人や肉体労働者で満員だったとか。そこを切り盛りしているご夫婦は朝10時から夜中の12時まで働きづめで、日曜日以外は休みもとらず お店を続けていたそうです。そこで、深夜まで灯る明かりを見て高野さんは、思ったそうです。『社会のヒーローはテレビの中にはいない。本物のヒーローやヒロインは、自分のできることを一生懸命やって、人知れず誰かの役にたっているのだ。』今 作家として食べて行ける幸せを語ってコラムは終わっていました。 東北も わずかながら私も 色々な災難を経験し、なんとか年の瀬までこぎつけることができました。今年は本当にものすごい年でした。大きい悲しみと痛みと もろもろの問題を突きつけられた一年でした。でも、そんな中で 私は日本人の底力を見せ付けられたって思いも大きいのです。 あの地震から続く数日間に見せた ここの町の人たちの働く人たちの誠実さや。被災地、避難所で見せた 被災者たちの頑張りや、思いやりや一生懸命さ。ああいった避難所で、皆が少ない食料を分け合って、子どもやお年寄りや女性を優先して守ろうとしたこと。それが、日本人の基本の心性としてあったこと。まだ、救助の手が届かないうちに 自分たちで救助の道路を確保せねば!と働き始めた人たちがたくさんいたということ。すごいなあ、と思います。私たちみんな、自分がこんなにすごいってこと知らなかったですよね。日本には 注目されないままに きちんと頑張っているヒーローやヒロインが たくさんいるってこと。それを知ったことが今年だったのだと 私はそう思っています。来年は私もヒロインめざして 頑張らねば。作品作ってゆかねば と決意の年越しを迎えています。みなさまもよいお年をおむかえください。<(_ _)>