楽園に吼える豹 第六章 復讐憐歌(28) 死を纏って
(まあ…今のところあの二人に間違いが起こるとは思えないけど……)レオンは藤堂の部屋を出て、てくてくと自分たちの部屋へと戻りながら物思いに耽っていた。(嫌だな……。アスカたちが二人っきりでいると思うだけで胸が灼(や)けつく。俺はアスカと藤堂さんがくっつくことを望んでたんじゃないのか?)危うい。恋とは何て厄介なのだ。(何とか気持ちを静めないとな………。全く、この俺が何てザマだ)先が思いやられる。自ずと溜め息が漏れた。レオンもユキヒロも去った部屋は、がらんとして妙に寒々しい。アスカは藤堂のベッドの左側に椅子を置いてそこに陣取り、相変わらず藤堂の顔を見つめていた。「う…」意識を夢の世界へ飛ばしていた藤堂が、不意にうめき声を上げた。眉根を寄せ、苦しげな息遣いが聞こえる。(うなされてる?)どうしたらいいのか、アスカは珍しくうろたえた。起こすべきだろうか。それとも寝かせておくべきなのだろうか。アスカが逡巡していると、藤堂は左手を弱々しく宙に彷徨わせた。微かに震えている。それは助けを求めているようでもあった。思わず彼の手を取る。熱い。藤堂の体内に淀む熱が、アスカに伝わってくるようだ。心なしか藤堂の呼吸が落ち着いたような気がする。それでもまだ辛そうだ。「…………」『君にはわからないだろう……復讐が…今まで私を生かしてきたのだから……』先ほど藤堂は、確かにそう言った。弱々しく聞き取り難い声であったが、アスカの耳には届いていた。(藤堂も、復讐を……?)何のために? 誰に対して? ―――わからない。冬が近づくと情緒不安定になるというのは、その復讐とやらが関係しているのだろうか。これも、推測の域を出ない。わからないことだらけだ。―――でも、一つだけわかることがある。“……もう、遅い。遅すぎるんだよ”藤堂が復讐を糧に生きているのなら。もしそれを遂げたなら。彼もフェレクと同じように、死を選ぶのだろうか。(―――嫌だ…)それだけは絶対に嫌だ。あんな光景は、もう二度と見たくない。アスカは藤堂の手を強く握った。今にも彼が自分の手をすり抜けて、どこかに行ってしまいそうで。「藤堂……」何度も何度も呼んだ彼の名前。「……お前も、死ぬのか……?」悲痛な問いかけに答える者はいなかった。ネット小説ランキング、人気ブログランキングに参加しました。よろしければぽちっと押してくださいな♪ヾ(*・∀・*)ノ"↓ネット小説ランキング>異世界FTシリアス部門>「楽園(エデン)に吼える豹」に投票な、長かった・・・やっと終わりました^_^;第六章ではやっと物語の核心に近づき始めましたね。次回の第七章は「交錯する思惑」という題です。まぁそのまま、色んな人間の思惑が絡み合う章になりそうです。物語に重要な影響を与える新キャラも登場しますので、お楽しみに(*^-^*)