慈しみの心を起こしなさい~招猫菩薩 降臨!
オレサマの凛々しい顔の評判がよかったので、ちょっとくつろいだところも見せてあげよう。お陰様で贅沢をさせてもらっているが、オレサマが頼んだわけではない。オレサマは実は高級キャットフードより、鯵のお頭付きの方が好きなのだ。前世の因縁で楽をさせてもらっているだけだ。人間世界では殺し合いが続いているというが、まったく愚かしいことである。罪のないものどもをたくさん殺しておいて正義を振りかざすことなど、ネコの世界では考えられないことである。ネコの世界でも喧嘩はあるが、江戸の花みたいなもので、殺し合うところまではいかない。堂々と自らの素手と牙で戦い、決着がつけばさっぱりと別れるスポーツみたいなものである。人間どもが知らない秘密の夜会で適当に序列を決めて、安定した社会をつくっている。少しは平和的なネコ智慧を分けてやりたいものであるが、万物の霊長などと勝手に決めて恥を知らない人間どもには、他者に学ぶこともできないだろう。もっとも昔は人間にも天晴れな奴がいたな。知っとるかな、インドにいた聖人ブッダだにゃ。ブッダが「生きとし生けるものが幸せでありますように」と言われたのを聴いたことがある。殺伐としたものどもの心の中にも明かりが灯るのを見た。嘘を言うなと?猫が時空を超える霊力を持つことを君は知らぬのか? 時にこれが化け猫や魔女の手先と間違われることになるのだが、ほんとはもっと崇高な力なのだよ。分かるな、愚かな人間どもよ。ブッダは人間どもだけでなく、生きものすべてや山や川にも道端の石ころひとつも尊いものだと説かれた。神の前なんてケチなことではなく、一切がそのまま、あるがままで平等で尊くかけがえのないものだと説かれたのだ。この尊い小さな星の中で、すべてのものが関係している。あたかもそれは大きな生命体のように、すべてのものが他に助けられて共に生きていると。それゆえ、「生きとし生けるものに、あたかも母がわが子を慈しむように、無上の慈しみの心を起こしなさい」と言われたのだ。オレサマはおそれいって「あんたの言うとおりだ」と叫んだよ。馬鹿な人間どもには、ニャーとしか聞こえなかっただろうが、ブッダにはしっかりと伝わったね。大声を出しなさるなと叱られた。シャイで愛想のないところがブッダの欠点だがね。 生きとし生けるものにあたかも母がわが子を慈しむように無上の慈しみの心を起こしなさい!(我が師ブッダのことばより) 追伸:照れ隠しにオレサマとは言っているが、ほんとは女の子だニャン。(合掌 招猫菩薩)